第11話
世界首都ゲルマニアの中央部にあるグロッセ・ハレに入ったりして過ぎ去った昨日はもう忘れて、僕たちは現在再びケーニヒスベルクまで戻ってきていた。そもそものここに来た理由が今から始まるものにイオが呼ばれたって言うものなんだけどね。
と言うことで、今から始まろうとしているものは観艦式だ。正式名称を『神聖ドイツ第三帝国建国55周年記念観艦式』としており、文字通り建国から今日で55年経つ(ということにされている)神聖ドイツ第三帝国の一大イベントだ。
当然各国からも大量に艦艇がやってきており、誰かの説ではおおむね5つに分類されると言う世界の、世界(第一→前世よりはるかに大きなアメリカ、第二→ペレストロイカで弱体化甚だしいソ連を筆頭とした世界共産主義大討論会(第5インターナショナル)、第三→大東亜共栄圏、第四→ドイツを筆頭とした鉄十字同盟(AdEC)及びヨーロッパ条約人民連合(ETVU)、第五→その他ユーゴやら中央アジアやらの非同盟諸国連合)と称される場所から多種多様な艦艇がやってきていた。まぁ、後は僕たちみたいな個人...ではなくて、この世の中の七の列強国の不思議パワーを持っている人からなる『七国女会議』なる謎組織の物もある。
一番艦艇が揃っているのはやはり開催国の神聖ドイツ第三帝国...ではなくて、我らが大日本帝国だった。まぁ、居住可能なすべての大陸に少なからず領土を持っているからね。沿岸警備とかで大量に艦艇がいるって言う事でもあるのだろうし、後は大艦巨砲主義を今なお牽引していると言う事もあってかぶっちぎりの海軍力ナンバーワンになってます。次に多いのは、面制圧力で言うのならば前世の領土の半分近くを喪失し逆にメキシコの殆どとカナダを吸収したミサイル万能説を地で行くアメリカ、総トン数と艦砲における秒あたりの鉄量で言えばイギリスだ。アメリカはともかくイギリスはよくあんな狭い国土で大量に艦艇持てるよね。あれ?今世だとアイルランド全土も併合してたっけ。
後は列強からの融通が全くない筈のユーゴスラヴィアが長門型くらいの大きさの超弩級戦艦(大和型が基準になった今にしてみれば、長門型こそ旧時代のものだけどね)を所持していたりと驚きも多いものだった。
ただ、そんな中で一番印象に残ったのはやはり『七国女会議』とかいう謎組織の艦艇だった。明らかに国を代表するよね、って感じの戦艦のすべてが七国女会議の所属艦艇だと言う謎が発生していた。大日本帝国が誇る現行軍用戦艦では最強を誇る4式50口径51糎三連装砲を3基9門装備した、ネームシップでもある和泉型戦艦一番艦『和泉』、アメリカ合衆国...またの名を超合衆国が持つ、ラインハルト家と言う人の手が加わっていない艦艇を自由に動かせる能力を持っている家の人一人だけの手で動かされている45口径18インチ3連装砲を3基9門搭載した大和級戦艦『ヴィクトリー』、ドイツに叩きのめされて結構強めな海軍力だけど...ってくらいになったところから急激復興した
それに加えて、一応存在することになっているイタリア王国の女王として現在進行形で君臨している...と言うことになっているし、なんなら大東亜共栄圏の総括長とかルクセンブルク大公とかの一面もあるらしい靜の、戦艦とは呼びたくない水上要塞『上野』、イオの所有艦ではあるけど一応イタリア王国軍属でもある『宵明/Vittorio Quirinale』、エルが持っているあの巨大な戦艦らしき何か、それでいて伝説に語られている別名現代の神風やら聖ギヨティーヌの断頭台こと『ELL』...って名前もうちょっとどうにかなんなかったのかな?それに、奥から出てきた...え?レールガンって実用化されてたん...?
『ああ、これは
イリェーニャさんの言葉に怯えておく。まぁ、それに加えて僕の宵月も今回は七国女会議の参加艦艇と言うことになったらしく(というか、本来どこの国の物でもない艦艇は観艦式に入れないんだけど)、その威容を見せつけている感じになっている。
...まぁ、うん。観艦式って言うのはこう言うものだよ。それにしても、他国籍の艦艇も相当持って来られているしそのまま戦争、って言うのも出来そうだと思っちゃうんだけどね。大日本帝国に至っては、単純に遠すぎて燃料が足りなくなるかもしれないと言う事なのか給油船まで付き従っているし。そのせいでさらに鈍足になっているのだとは思うのだけれどね。
そんな中始まった観艦式は、おおむね順調に進んだ。それぞれの国家の艦艇が空砲を撃ったりしてアピールをしているけど、大日本帝国と超合衆国の独壇場みたいな感じだった。因みに、七国女会議の艦艇には今回は国のメインとして出している艦艇以外は砲撃禁止の制約があるので大日本帝国は和泉型三隻、ドイツはティルピッツツヴァイ、赤色海軍はソビエツキーソユーズドゥヴァ級三隻を封じられているんだけどね。それにしても大迫力なのは変わりなかった。
観艦式も終わりを迎え、いつの間にか僕たちは横濱に帰ってきていた。気付けばもう四月、この世界で半年も過ごした計算になる。この半年間で色々ありすぎだろと突っ込みたくはなるものの、喉元にぐっとこらえることにした。本当に色々あったとは思うのだけど、そんな色々が今の僕の立場を作っているのだと思うとなんだか感慨深いものがあるような気がした。パラレルワールドに逆行転生?して、国家試験を取って、記念みたいな階級を入手して、戦艦に乗って、外国に行って...これだけでも5年くらいは経ってしかるべきなのに、未だ半年しか過ぎ去ってはいないのだ。物語だったらちょっとしたエピローグもあって良かろうと思うのは僕だけかな?
...そんなことを言ってもどうしようもないのだけどね。靜を助けたのは完全に僕の自己判断に基づいた危険な行動だし、それが無ければ上條家のチンピラを退けることも無ければ、ドイツになんて向かう事も無かったのだろう。
「...?優希、私の顔に何かついてるの?」
想いながら靜の顔を見ていたからだろうか。靜が僕の事を不思議そうに見つめてきたので「なんでもないよ」と返しておいて、僕は秋津洲戦記の追加分を描き始めておく。...期限前のデスマーチと言うのは中学校の時のワーク提出で終わりにするって決めたからね。別に苦手と言うわけではないのだけど、時間と精神的な余裕がない時は仕事が雑になりやすい。仮にも商業の為のものを見苦しいクオリティで出すと言うのは全くよろしいものではない。
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