美少年姿の神様と過酷な運命に勇敢に立ち向かう少女
- ★★★ Excellent!!!
この小説は主人公の藍花という女子高生が、美少年の姿を神様を助けたことをきっかけに始まります。しかしこの小説、冒頭からほとんど何もわからないまま、とんでもないことに巻き込まれます。といいますのも、美少年姿の神様(弓丸)が、関わらないほうがいいなどと言って、必要最低限のことしか説明してくれないからなんですね。
しかしそれが減点になるかといえばそんなことはなく、むしろミステリアスな展開にしてくれていて、構造的にはプラスになっているのです。その謎がじょじょに明らかになっていく楽しみというのがこの小説の醍醐味になっているわけですね。
もちろん、弓丸が藍花に事情を説明しないのにも、ちゃんと優しい理由というのがあります。しかも、その理由というのが、この小説のテーマにも通じているのです。
ストーリーの中で、弓丸は他人を助けるために自らを傷つけるような行いをするのです。それを見た藍花は心を痛めるわけです。ところが、藍花も弓丸を救うために自分を傷つけようとするんですね。そういった展開を通して、藍花の口を通して、「他人を助けるために自分を傷つけることは、自分だけじゃなくて他人の心も傷つける。それは果たしていいことなのか」っていうテーマを提示してくるわけです。
そのテーマを通じて、藍花の葛藤だったり、キャラクターとして魅力があふれ出てきていて、そこに大きな吸引力を感じる小説だったと思います。