第12話 ジャックのその後
朝日が差し込み、リリーナの家の中が柔らかな光で包まれる頃、悠斗はベッドからゆっくりと起き上がった。悪夢の残像がまだ心の奥に残っているが、それを振り払うように顔を洗い、身支度を整える。
「もう、あれは過去のことだ。今は違う……」
悠斗は自分に言い聞かせながら、みんなが居る居間へと向かう。そこにはすでにリリーナとリリア、そしてリリーナの父が談笑していた。ここ数日、リリアは当然のようにリリーナの家に来ている。泊まっているわけではないので、毎朝悠斗より早起きをして家を訪れているのだろう。
そんな3人の顔を見たことで、朝の穏やかな雰囲気を感じ悠斗の顔には笑顔が戻る。
「おはよう、ユウト!よく眠れた?」
リリーナが明るく声をかける。彼女の声が、悠斗の胸のざわつきを少しだけ和らげた。
「おはよう。まあ、そこそこな……感じかな」
曖昧な返事をしながらも、悠斗は席に着く。リリアも小さな笑みを浮かべ、ローブを深く被ったまま、静かに飲み物を淹れている。
「ところで、今朝の話だが……」
リリーナの父が少し真剣な表情で切り出した。
「王宮の内部は相当混乱しているみたいだな。ジャックが失脚してから、新しい国王が立ったんだ。聞いているかい?」
リリーナの父は、言葉を続ける。
悠斗はそれを聞いて少し驚いた。ジャックの失脚はもちろん知っていた。なんでも、ジャックの部下の1人がジャックの今までの悪行を内部告発したそうだ。
その際、綺麗に証拠もまとめられていたため見事にジャックは失脚したようである。
悠斗が知っているのはここまでで、その後の王国の状況については詳しく知らなかった。
「新しい国王が?どんな人なんですか?」
「名前はアレクシス。かつての王家の末裔で、王位継承権は持っていたんだが、ジャックが無理やりその地位を奪っていたらしい。そんな経歴もあり彼が王位に就いたというわけだ」
リリーナの父は、そう話しながら少し嬉しそうな表情を見せる。
「アレクシス王は、正義感が強くて民に優しいって評判なんだ。ジャックの横暴な政治とは正反対のリーダーシップを持っている」
「なるほど、それなら少しは国が落ち着きそうだな」
悠斗はリリーナの父の話を聞いて、安心したように頷いた。ジャックの支配下では、ファルディア王国は不安定で民衆も困窮していたが、新しい国王が正しいリーダーならば、少しずつ平和が訪れるかもしれない。
「そうね。でも、国王が変わったとはいえ、まだまだ完全に安定したわけではないみたい。ジャックの残党がまだ王宮内外で力を持っていて、彼らが新しい王政を妨害しようとしているって話もあるわ」
リリアが静かに言葉を継ぐ。ローブを被ったままだが、声には警戒の色が含まれている。
「ジャックの部下たちは、彼のやり方に従って私利私欲を追い求めていたからな……。簡単に彼らの影響力が消えるとは思えない」
「そうか……まだ油断はできないってことか」
悠斗はリリアの言葉をかみしめ、緊張感を保ちながら考え込んだ。彼自身も、この国で生き延びるためには、今後の情勢に注意を払っていく必要があると感じていた。
「でも、アレクシス王が新しい体制を築いていけば、いずれはジャックの残党も排除されるはず!どれだけ早く、しっかりと王国を統治できるかが鍵だね」
リリーナが希望を込めて微笑む。その姿に、悠斗も少しだけ気が楽になった。彼女の明るさは、周囲の重い雰囲気を和らげる力を持っている。
「まあ、今後の情勢がどう転ぶにせよ、俺たちはその中でやれることをやるしかないな」
悠斗は笑みを浮かべながら言うと、リリーナの父もリリアも頷いた。
「とにかく、しばらくはここで静かに暮らそう。私も、リリーナのためにまた頑張らないとな」
リリーナの父が決意を新たにすると、リリーナも「うん!」と力強く返事をする。リリアはそんな2人のやり取りを見守りながら、再び静かにハーブティーを飲んでいた。
悠斗は、ふと空を見上げ、異世界の澄んだ青空に目を細めた。
「まぁ、愛も変わらず俺は死なない程度に頑張ります」
その一言が、皆の笑いを誘った。
「そうね、死なない程度にね!」
リリーナが笑顔で続ける。
和やかな空気がリリーナの家に広がり、朝の日差しが優しく彼らを包み込む。
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