第8話 一件落着
リリアの言葉に頷いた悠斗たちは、リリーナの家に戻ることを決めた。森の奥にあるリリーナの家は、王宮からも距離があり、追っ手がすぐに追いかけてくる心配は少ない。リリーナが家に帰り着くと、父親を案じていた気持ちから、再び涙を流し始めた。
「ごめんね、お父さん……」
「リリーナ……。謝るな。本当に謝るべきは、俺の方だ。不甲斐ない父親で本当にすまない。お前が無事でいてくれて本当によかった」
父親は優しく彼女の頭を撫で、微笑んでみせた。リリーナはその手の温もりに、再び泣き笑いのような表情を浮かべる。
「これにて一件落着だな。リリーナさん、中に入ろう」
悠斗は彼女を促し、家の中に入る。リリーナの父親もリリアも後に続いた。家の中は、穏やかな暖かさに包まれていて、ささやかながらも安堵の空気が漂っていた。
「なんで家主でもないあなたが誘導するのよ」
リリアは、悠人に対してツッコミを入れる。
「別に良いいだろ!気を遣った結果だ」
*
リリーナはさっそく、キッチンで手早く食事の準備を始めた。簡単な野菜スープを温め直し、パンと一緒にテーブルに並べる。
「これしかないけど、みんなお腹空いてるよね?」
彼女が控えめに言うと、悠斗は手を合わせ、笑顔で答える。
「ありがとう、リリーナさん。あんなことがあった後に手料理を作ってくれるなんて、本当にありがたいよ」
リリアもローブの下から、わずかに口元を緩ませたような雰囲気で頷く。
「いただきます」
悠斗たちはスープを一口飲むと、その優しい味が体に染み渡り、疲れた体と心がじんわりと癒される感覚を味わった。リリーナもほっとしたように笑い、テーブル越しに父親と見つめ合う。
「みんなが無事で、本当に良かった……」
リリーナの声は、安堵と感謝の気持ちが溢れていた。父親もその言葉に頷き、少し照れたように目をそらす。
「本当にありがとう、リリアちゃん、ユウト……」
悠斗はリリーナの言葉を聞き、少し照れくさそうに頭をかいた。
「俺はただ、リリーナさんを助けたかっただけだよ。ここにきてから最初に手を差し伸べてくれた君を」
リリアもその言葉に静かに頷き、ローブを深く被り直す。
「あの時、声をかけてよかった!」
リリーナはそう言っておどける。彼女の父親は、改めて感謝の気持ちを込めて、悠斗とリリアに微笑んだ。家の中は、ほんのひと時、平和な空気に包まれた。
*
夕暮れが近づき、リリーナの家の窓から差し込む橙色の光が、室内を柔らかく照らしている。外の鳥たちのさえずりが耳に心地よく響く中、悠斗はふと窓の外を見つめた。
「まあ、今度は死なない程度に頑張りますか……」
ふと漏れたその言葉に、リリアが微かに笑みを浮かべるのが見えた。
「その言葉、忘れないでね」
「なんだよ。いつから後ろにいたんだ?」
「ずっと後ろにいたわ」
「怖すぎる」
悠人は、この世界に来てから初めて平和な夜を過ごしたのであった。
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