第6話 父の告白
リリーナに見送られ、悠斗とリリアは地図を手に再び王宮の内部へと向かう。
「この通路を通ると、例の拷問部屋へ続く道にたどり着けるはずよ。だけど、途中にはジャックの手下たちが見張っているだろうから、油断はできないわ。とはいえジャックそのものは、あなたが倒してしまったから今頃城内は騒然となっているかも」
リリアが地図を指さしながら囁いた。二人は再び、王宮の地下道に足を踏み入れていた。冷たい空気が肌を刺すようで、闇が深く重くのしかかる。悠斗は影の力を使い、リリアと共に地面に溶け込むように進んでいく。
「影の力って、使いこなすとかなり便利だな」
「油断禁物!影に溶け込みすぎると、影と一体化しすぎて自分を見失うことがあるから」
「それ、めっちゃ怖いな……。もっと早く言ってくれよ」
「最初に言ってしまうとそれはそれで、影属性の力が発動しづらかったりして難しいのよ」
最初に、恐ろしい話をされると萎縮して能力がうまく使えなくなってしまう、ということのようである。
リリアのアドバイスを胸に、悠斗は集中力を高める。2人は影の中を滑るように進み、兵士たちの目をかいくぐりながら奥へと進んでいった。やがて、地図で示された地点にたどり着く。
「この先が例の部屋か……」
悠斗はリリアの視線を追い、目の前の重厚な鉄扉を見つめた。扉には錆びついた鍵穴があり、厳重に施錠されているようだった。
「影の力で内部の鍵を外すことはできるはず。やってみる?」
悠斗はリリアのその言葉に無言で頷く。再び影の力を使い、自分の影を鍵穴に潜り込ませた。影の中で手探りをするように、鍵の構造をイメージしながら慎重に動かす。数秒後、カチリと音がして鍵が外れる感覚が指先に伝わった。
1回、ピッキングというものをしてみたかったんだよなぁ。とこの世界に来る前探偵ドラマの見過ぎで抱いていた夢が叶った悠斗であった。
「よし……開いた」
「中々センスがあるわね」
リリアは微笑みながら扉を押し開けた。二人が中に足を踏み入れると、そこには石造りの暗い通路が続いていた。通路の先にはかすかな人の声が聞こえる。リリアは指を唇に当て、慎重に進むよう合図を送った。
「気をつけて」
悠斗は頷き、影の中に溶け込みながらリリアと共に進む。やがて、通路の先に小さな牢が現れ、その中に見覚えのある男が縛り付けられているのが見えた。
「リリーナさんのお父さん……!」
悠斗はその姿を見つけ、急いで牢に駆け寄る。彼の顔は痛々しい生傷が多くあり、目には最初にあった時以上に疲れが滲んでいた。
「おい、しっかりしてくれ!」
悠斗が声をかけると、男は微かに目を開け、ぼんやりとした目で悠斗を見上げた。
「……リリーナ、リリーナは……?」
かすれた声で娘の名を呟く彼に、悠斗は力強く答えた。
「リリーナさんは無事だ!とりあえずここから脱出するぞ」
その言葉を聞いて、リリーナの父の瞳にかすかな希望の光が宿る。
「本当に……リリーナが……。ありがとう……。でも、俺はここから出られない……」
彼の声は力を失っていたが、悠斗はその手を掴み、力強く言った。
「何言ってるんだ。出よう!」
「俺は、この城の警備の仕事をしているんだ」
「そうだったのか」
悠斗は、父親が何の仕事をしているのか知らないと言っていたリリーナの言葉を思い出した。
「元々、ジャックの命にはうんざりとしていた。でも仕事だからと割り切ってやっていた。だけど、段々と受け入れ難い非道なことをさせられるようになっていた。それでも食らいついていた。でなければ家族を、リリーナを守れない。自分を騙して、無心で仕事をし続けていた」
「……」
「しかし、一昨日のことだ。リリーナを捉えろと命令がでた。いつか来るかもしれないと心のどこかでは思っていた。だけど何の対策もできなかった。俺は、この命に従うことができなかった。そしてこのざまだ」
「そんなの。当たり前よ」
リリアが下を俯きながら呟く。
悠斗は、やるせない気持ちになった。
「俺は、どうやって娘に会えば良い?こんな誰にも誇れない仕事をしてきて、最終的にはクビみたいなもんだ。何も残らなかった」
「良いんですよ。良いんだ。仕事なんて、また探せば良い。無理をして1つのところにいて命を落としたやつを俺は知っている。そんなに頑張らなくて良いですよ。いや違うな。そんなに頑張れるんだったら別のところで頑張ったらもっと良い成果が出せますよ。とりあえずあとのことはここを出て、リリーナさんと再開してから考えていきましょ」
悠斗は、自分ができなかったことを伝えているような気がして胸が痛んだ。だが、この自分ができなかったことがいかに大事か、死を経験した今ならわかる。
「ここにいても見張りに見つかる可能性がある。急いで出ましょう!」
リリアも慎重に周囲を確認しながら、鍵のかかった牢を影の力で解錠する準備を進める。
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