第11話
しみじみと思い返し、想う。
懐かしき日々を、これからも続く愛おしい時間を。
「なにいまのかおやばぃ、みてう?」
「みている…かっよすぎ」
「如何したんだふたりとも…ものすごく顔が赤い…発熱か?」
ふたりの元へ近寄り額に手を当てる。
うむ、熱がある。
「ひゃあああああ…それをやめてくれってぇぇぇ」
「……」
「あっぁ、えっえーる、いきろぉ、いきを、するんだっぁあ」
「…だめむりとおといやさしいかおちかいすごい…」
「…そんなにわたしはやばいのか…」
心配して癒しの魔法を頭を撫でながら施す。
だが効いている様子が無い。
これがわたしがやばいという事なのだろうか。
だとするとまさか。
わたしは馬鹿な考えを巡らせてしまった。
…いや、まさか。
そんなはず、ない。
そんな心の声を洩らしてしまっていたようで、
「どうしたんですかぁ…」
「ちかいぃ…しゅき…」
エールくんはもう駄目だとばかりにハットくんの胸に顔を押し付けたが、ハットくんはわたしの言葉を拾ってくれた。
わたし慣れ、しているという事だろうか。
「…そもそも、わたしが人間を知ろうとしたのは、とある人を好きになったからなのだが」
「な、なんだとぅ!?」
「ひえっっ白鷹様の恋バナ!?お、俺それ聞いて大丈夫かなっ!!?」
何故か硬直してしまうふたりに、わたしはひとまず事の経緯を話す事にした。
聞いてほしいのだが、話すのは恥ずかしい、という矛盾する気持ちが生まれているが。
「その人と出会ったのは真なる姿の時が初めてだった。その頃わたしは人のことを知らぬ愚か者であった。その為、ちょっとした興味本位で書架へまいったのだ。そこで、わたしは美しいものをみた」
「…こいばなだ…」
「お、おちゃいれなおしたほうがいいかな…?」
急にワタワタし始めるふたりに、わたしは言葉を続ける。
「書架を守護する彼は、無口で真面目で、本当に心の底から己の職務を誇りに思いまっとうしていた。…いや、騎士の皆もそうではあるのだが…魂と彼の資質と職務が調和した…そう、何千年も生きる木樹のような聡明さを彼は持っていて…ずっと傍にいたいとわたしは思ったのだ」
始めて会った時の事は今も鮮明に思い出せる。
そして思い出しては何度も惚れ直してしまう。
実際会う度に惚れ直してしまっているけれども。
「…どうしよう、相手誰なのか分かった」
「どんなひと?」
「書架の番人…たしかにむちゃくちゃ真面目で、ちょっととっつきにくい人、かな」
ああ、確かにとっつきにく人なのかもしれない。
けれどわたしにはそれすらも好ましくみえた、おもえた。
それが恋なのだと、わたしは知っている。
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