5.保護者
私たちに助けを求めた幼い少女の名前はマリアちゃん。
明るい茶色の髪をした十一歳の女の子。
マリアちゃんの住むユミルと言う名前の村が野盗に襲われ、一人助かった彼女は救いを求めて歩き続けた。
こんなに小さな子が、どれだけ大変で辛かった事だろうか。
気付けば、私はマリアちゃんを力強く抱きしめていた。
†
私たちはマリアちゃんに村までの案内をお願いすると、即座に草原を駆けた。
マリアちゃんを背負ったクラウドを先頭に、私とパンチラ気味のプレセアが後方で並走する。
一刻も早く村に辿り着かなきゃ。
でもその前に……。
(プレセア、パンツ見えてるよ)
プレセアに近付いて耳元に小声で注意した。
余りにもチラチラし過ぎてる。
マリアちゃんの教育上にも悪い。
「はいはい」
言われてスカートの腰の位置を下げるプレセア。
手の掛からない良い子のはずだったのに、どうしてこうなった?
これじゃあ私、プレセアのお姉さんじゃなくて、お母さんだ。
†
日が沈みかけ、世界が赤く
「………」
言葉が出せない。
目にしたのは、壊された家屋と、いたるところに飛び散った無数の血の跡。
そして、亡くなった沢山の村の人たち。
アリシア達なら救えると思った。救えるはずだった。
でも、間に合わなかった。
一夜という時の流れは、救助を要する時間として余りにも長過ぎたのだ。
目の前の凄惨な光景を見て、マリアちゃんは泣き崩れている。
その姿を見た私は、自然と
マリアちゃんの怪我を見た時と違って、体が怖さで震えることはなかった。
きっと、恐怖よりも野盗たちへの怒りが勝っているからだ。
「ガキがいないわね」
私の隣に立っているプレセアが言った。
プレセアの言う通り、確かに子供たちの姿が見当たらない。
亡くなっている沢山の村の人たちは全員が大人。子供は一人もいない。
村にいる子供がマリアちゃんだけなんて事は、まず考えられない。
私欲の為に連れ去ったんだ。
考えられる理由は——
仲間として育てる為。
奴隷のような労働力として扱う為。
そして、欲望を満たす為と、人身売買。
私の浅い知識から出した答えだけど、合ってる可能性は高いと思う。
幼い子供を物のように扱うなんて許せない。
「プレセア、マリアちゃんをお願い。行くわよ、クラウド」
私はマリアちゃんをプレセアに任せて
「お姉様、待って」
「止めないで。あなの言いたいことはわかってる。だけど、
心配して止めようとしてくれるのは嬉しい。
でも、この感情と握った拳をそのままには出来ない。
私の怒りは収まらない。
「行き先、わかってるの?」
…………。
「ごめん、わからないわ」
お母さんなのは、プレセアの方かもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます