2.可憐な次女?2
私は目を閉じ、神経を集中させ、詠唱を口にした。
「血の繋がりを持つ親愛なる我が妹、プレセアに告げる——盟約により結ばれた汝の力を示す為——我が呼び声に応えよ—―」
私が考えて作った魔法の詠唱文。
魔法として意味を成すのなら、お願い、プレセアを私の元に——
詠唱を終えると、祈るように手を組んで強く願った。
すると、瞼の向こう側から強い光が私を照らした。
(う、ぐっ……)
目を閉じながら手で光を遮ると、私は片膝を落とした。
魔法を使ったせいか、急に体が重く感じる。
熱も出ている気がする。
体が凄くダルくて、気を失ってしまいそうなほどの睡魔に襲われた。
でも、こんな状況で眠ってなんていられない。
気を失っては駄目。
私は強烈な睡魔と眩しい光に抗いながら、ゆっくりと瞼を開けた。
目で光を捉えてから数秒後、光は徐々に収まっていく。
そして完全に光が消え去ると、そこには直径三メートルほどの大きさをした魔方陣の上に、一人の少女が立って……いなかった。
(ほ、ほぇ?)
†
「ん、うぅぅん……」
と頭を捻る。
少女がいないわけじゃない。
いるにはいる。
魔方陣の上にちゃんといる。
いるけど……魔方陣の上に立ってはいない。
魔方陣の上で横になって寝ていた。
そして気持ち良さそうに寝返りを打ったりしている。
白いぶかぶかのTシャツに、パンツ一枚の
Tシャツの表と裏には大きな文字でデカデカとプリントされている。
表には、『おねぇ様命』。
裏には、『おねぇ様
お、推しTシャツ?
あ、お尻かいた。
プレセア……だよね?
私が創作したプレセアは、植物と動物を愛する、おしとやかな女の子。
優しい心を持った、仲間想いの可憐な乙女。
寝る時はフリフリの可愛らしいパジャマを着るタイプ。
小動物に咬まれても、我慢して『大丈夫、怖くないよ。怯えていただけなんだよね』と言って解決する性格。(優しいけど怪我や病気の事を考えると決しておすすめは出来ない行動)
い、
アリシアと同じ水色の髪と、ショートボブだけは
私みたいなコミュ症で地味な女の子が総じて苦手なギャル。(これって偏見?)
「……プレセア?」
私はプレセアらしき女の子に近付くと、手を伸ばしながら膝を曲げて声を掛けた。
「ん?」
声に反応してアイマスクを親指でくいっと上げる女の子。仕草がなんかイケメン。
「んん?」
今度は上半身を起こすと、私を見てから周囲を見渡した。
そして再度、私に目を向けると——。
「アリシアお姉様?」
アリシアの名前を口にした。
という事は、この少女はアリシアの妹、プレセアだ。
納得いかないけど、プレセアだ。
腑に落ちないけど、プレセアだ。
「お願いプレセア、この子を助けてあげて」
私はプレセアの目を見て必死に訴えた。
プレセアは私から視線を外して怪我をしている女の子を見た。
「ああ、うん、OK。あのメスガキを治療したらいいのね」
「そう! あのメスガ……」
え、聞き間違い?
今、メスガキって言った?
プレセアはゆっくりと起き上がり、女の子に近付いた。
そして数秒間考える素振りを見せた後、女の子に手で触れた。
手で触れた箇所から、淡い光が女の子の体を徐々に包み込んでいく。
すると、傷口から垂れている生々しかった血が
女の子の険しかった表情が、安らかな寝顔へと変わっていく。
乱れていた呼吸も、静かな深い呼吸に変わった。
「ま、こんなところかな」
そう言って、プレセアは女の子から手を離した。
「この子は助かるのね?」
「ええ」
プレセアは微笑みを見せて誇らしげに答えた。
はっきりと肯定したプレセアの言葉に気が緩んだせいか、私は襲って来た睡魔に抗えなくなり、
「よか、った……」
バタンと倒れ、そのまま意識を失い眠ってしまった。
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