第10話 能力→階級→地位

「初めまして…三月朝日です…」 


怜は続けて

「能力は着火、F級です…」

(本来なら無能力者はここには入れないけど…)




時は少し遡り、事務所にて


「潜入調査にあたって、君には能力者に偽装してもらうよ。」

博士は指輪や腕輪、ネックレスなどの装飾品をテーブルに並べる


「偽装…ですか」

怜は装飾品を眺める


「今の君は無能力者、だが私の発明品を使えば能力者にだってなれる!」

博士は装飾品を手にとって、


「これが虚無を生み出せる!」

「これが対象者を脳死させる!!」

と、虚無やら脳死やら恐ろしい単語を口にし、


指輪を差して、

「最後にこれが小さな火を出せる。」

と小さく呟く


「さぁ、どれが良い!?」

怜は満面の笑みを向けられる


「どれも………で……上位存在の……から………が……で……」

これらの説明をしているようだが、難しく全然頭に入って来ない


「えと、火でお願いします。」

怜は答える


(これが1番安全そうだな…)


それに博士は

「オススメは虚無だったんがな…」

となんだか残念そうにしている


「まぁ気を取り直して、それはFランクからDランク級の炎が出せる指輪だ。使い方はあとで教えるよ。」



ランク。



聞くだけでも嫌な単語だ。



能力者にはA〜Gまでの階級がある


僕はランクの最下層、G級、無能力者だからこそあの日々を過ごした。


自分のいるこの世界、この巨大都市はランクの高さこそがその地位。


僕はこの世界が大嫌いだ。




(たしかこうだったかな…)

怜は右手に着けている指輪に触れ、人差し指を上向きに指す


すると指先からライターくらいの火が現れる


「こんな感じです、よろしくお願いします…」

と言うとまばらに拍手のが起こる


「頑張ってくださいね、1番後ろの席へどうぞ」


用意されているのは1番後ろの角の席


(ここで静かに過ごしてたら目立つことは無いかな…)


となりの席の美形の男子生徒にこっそりと挨拶をする

「よろしくお願いします…」


「ん………」

男子生徒はこちらに目をやり、すぐさま視線を前へ戻す




授業の内容は一般的な物だったが、怜を苦しませたのは能力についての教科だった


(対立?7席?回路?)

理解不能な単語が出ては、すぐに次の単語が出てくる


「ではここまで。次も現代能力史だからなー」

教師の声がチャイムと共に聞こえる


(やっと昼休みだ…)

怜は安堵し、机に突っ伏せる


「能力史って難しいよな」

突如、頭上から話しかけられる


顔を上げると、

朝、挨拶をした美形の男子生徒がいた

「あっ…まずは名前か…俺、裕貴。」


「朝日君…だったよね、よろしく」

握手を求められ、怜はそれに応える


「あ、えと…よろしくお願いします…」


「昼、一緒にどう?」

ユウキは菓子パンを片手に言う


しまった、弁当を事務所に忘れてしまった。


しばらく考えているとそれを察したかのように

「持ってきてないの?それなら買いに行かないと。すぐ売り切れるよ。」

裕貴は教室の出入り口を指さす


「ちょっと行ってきます…!」

怜は急いで財布を鞄から取り出し、教室を後にする


(あの人、良い人だったな…)

優しくされるだけで心が満たされるようだった


(いやいや!ここには潜入捜査に来ているんだ!)

(そんな事今は考えるな…)

自分に発破をかけるように両の頬を平手で叩く


怜はここである事に気付く

(あ…そうだ、購買の場所聞けば良かった…)

と思ったが遅く、見知らぬ場所へ来てしまっていた



迷うこと10分



怜は完全に迷子になっていた


キーン、コーン、カーン、コーン

チャイムが鳴る


(マズい!早く戻らないと!)

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シークレット・ロマンへようこそ 木野後藤 @kinokami0128

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