第4話

「さくや酷いよぉおお!どうして私じゃなくて月夜召喚したの!!酷いよぉお!!」


とこのように今現在、玄関で陽鬼に泣き付かれ動くことが出来なくなっている。

家に帰宅しにカードから陽鬼を出すと何故ダンジョンで召喚しなかったかと詰められた。

リビングからはハンバーグのいい匂いが漂ってきており、空腹で音を鳴らす胃袋に対しての拷問を今受けている。


「お義母様~!!さくやが召喚してくれないんです~!!」


俺の言い分を聞かずにリビングに入って行く陽鬼...

っておい!!お母さんに助けを求めるのは反則だろ!

絶対陽鬼の味方になるんだから――


「さくやぁ、早くリビングに入ってらっしゃい」


ほら、俺がここから助かる未来なんてもう無いんだ。










次の日、俺は目の下にクマを作って東第一高等学校に登校していた。

まぁ、誰かと関わることなんてないからクマとか気にしてないけどね。

誰がぼっちだ誰が。


いつも通り2年3組の扉を開けて席へと向かう。

様々な視線を受けるが、その視線の中に善意の「ぜ」文字も感じられない。

そしてひそひそと毎日毎日、飽きないのかな。


ただ、全員が全員俺のことを悪感情だけで見ているわけではなくオタク集団や同じボッチ族からは無のような哀れみのような眼を向けられる。


今日そのオタク達は何故かいつも以上に騒いでいた。

聞き耳を立ててみると――


「おい!聞いたか!!Dライバーのみこりんがこの学校に転入するって!」

「いや、そんなのウソだろ。あのみこりんが入ってくるわけないって」

「って俺も思ってたんだけどよ!!今日、ほんとに転入生が入ってくるらしいんだよ」

「マジ?それどこのクラスだよ」

「それが噂だと隣のクラスに――」


チャイムが鳴り担任の先生が教室に入ってくる。

そしてその数分後、隣のクラスから男どもの叫び声が聞こえてきた。

まるでオタク達の話を肯定しているかのように。


【Dライバー】はダンジョン内でライブ配信しながら探索を行う探索者のことを言う。

俺はたまにしか見ていないがそれでもみこりんという名前は知っている。

あんまり見ていない俺ですら知っているんだから有名人なのだろう。


ちなみに、俺のモンスター達にDライブの存在を教えたところ

「是非やりましょう!」とすることを進められたが断っている。


一通り朝の授業が終わり、俺は一人席を立つことも無く弁当を食べている。

いつもは騒がしい教室も今は静かだ。

多分だが、クラスの男どもは弁当を持ってみこりんの所へとアタックしに行っているのだろう。

女の子達と机を合わせて飯を食べてる北川が居るから男が居ないってわけじゃないけどな。

いつもと比べれば静かなもんだ。



この静かな時間が毎日続いてくれたらな。






ピーピーピーピー!!!






不意に探索者フォンの着信音が教室内で鳴り響く。

マナーモードを貫通してきたと言うことは緊急を要することなのだろう。

だが、この機能がある探索者フォンを買うにはCランク以上の探索者でなくてはならない。

それが同時にクラス内で鳴り響いている。

一個は、クラスで人気があるランキング9000位の北川だろう。


だけどそれ以外にCランクの探索者がいるなどとは思っていないクラスメイトからすればもう一個の警告音の発生源は誰なんだとなるわけで...


「え、どこから鳴ってるんだろ?」

「北川君!探索者フォン二個持ちだったりする!?」

「いや...もう一個の音はこっちから――」


ばっちり北川と目が合ってしまう。

これは嫌な予感が――



北川がこっちに来ようと席を立った瞬間に地震が起こる。

ゆるゆらと校舎が揺れること20秒。

揺れが収まった後に市のアナウンスで避難勧告が出される。


『只今、ダンジョンブレイクが起こりました。速やかに近くの学校に避難を始めてください繰り返します――』


【ダンジョンブレイク】。

簡単に言えばダンジョンの入り口からモンスターが溢れ出し、意のままに暴れまわる。

一度起こってしまったダンジョンブレイクを鎮める方法は、ボスを倒す。

ただそれだけだ。


スムーズに探索者が派遣されモンスターの殲滅に当たれば、ボスがダンジョンの外に出る前に倒しダンジョンが正常に戻るが、ボスが外に出ればかなりの被害が出てしまうと言われる。


ダンジョンブレイクを起こす理由は、今現在も分かっていない。

仮説は多くあり、その一つがダンジョンにはモンスターの貯蓄量が決まっていて

適度にモンスターを狩らないといけないなど。

現に、人が良く入り浸るダンジョンではブレイクしたことが無い。


そんなことはさておき、行かないといけない。

正直普通の探索者は行きたくないだろう。

通常のダンジョンと違いモンスターの量が半端ないからだ。

覚悟がいる。


だけど俺は行かないといけない。

勿論、お母さんが住んでる町を市を守らないとっていう気持ちもあるし、あいつとのもある。








だけどそれ以上に――






















ダンジョンブレイクは俺の父さんを殺したからやり返さないといけない。










その為に俺は











[1年前]


ポチャン


一滴の血を垂らす。


早く、父さんの敵を取らないと


目の前に浮かんだプレートの中にある自分がなれる職業を見つめる。


「........」


D剣士、C魔法使い、B拳闘士――


「.......S」


Aランクの職業が無く、諦めてBランクの拳闘士にしようと思ったその時。

最後の職業欄に地獄への切符ととも感じ取れるSランク適性の職業が存在していた。





「カードマスター」






迷わなかった。

直感がこれにしろと言っているようだった。

そして体が動く、指がカードマスターに触れた。









そしてその日から俺は、を探した。


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突如世界に追加された『ランキング』1位が不遇職『カードマスター』だった 璃々宮志郎 @ririmiyashirou

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