第15話 警告と無知な己


 「話って何かしら。今回は踏み込めるのよね?」

 

 「当たり前です。澄と想の話です。けしかけたのは先輩ですよね?どういうつもりですか。それに今度はメイを巻き込んで!」

 

 「えらく強気ね。大義名分ができたからかしら?自分は澄を傷つけさせるのに、私がしたら怒るのね?」

 

 「今は関係ありません。質問に答えてください。これでも僕はあなたを信頼しているんです。きっと、理由があるはずです。」

 

 目の前に大人気モデル『しずく』がいる。夕焼けまでもが彼女に味方し美を演出している。

 

 だが、今僕は古くからの付き合いのある『白雪雫花』に向き合っている。

 

 大丈夫だ。気負う必要は無い。

 

 彼女の会話のペースに飲まれず、シンプルに言葉をぶつければ大丈夫なはずだ。

 

 前回は無駄に考えすぎてから回ったが、この人に対しては全てをさらけ出した方が強くいれる。

 

 「……そうよ、提案したのは私。でも勘違いしないで欲しいわね。承諾して実行したのはあの二人よ?」

 

 「はい。そこを責めるつもりはありません。今日のメイと澄の一件。こうなるってわかってましたよね。それなのにけしかけた。そこが分からないんですよ。」

 

 「悪いけど、そこまでなんでも理解しているわけじゃないわ。妹ちゃんの存在は知らなかったわよ。そこまで想と仲良くないからね。……まあそもそもなんで、こんなことをしなくてはならなかったのか。……それは考えたのかしら?」

 

 予想外の返しに戸惑う。先輩が知らないことがあるなんてという驚き。

 

 揉めることを想定とした偽装では無いこと。

 

 おそらく言い回し的に原因となっているのは僕だとわかる。

 

 だが、何故、ふたりが付き合うことで僕に繋がるのか全く分からない。

 

 「わかり……ません。」

 

 「でしょうね。」

 

 海から近いフェンスに持たれ、腕を組み直してみせる。

 

 「まあいいわ。最後の忠告をしてあげる。」

 

 「忠告?」

 

 「近いうち、大きな揉め事が起きるわ。きっと避けられないでしょうね。あなたは今のままじゃ、きっと後悔する。友達も好きな人も、きっと失うことになるわ。」

 

 「なんですか、揉め事って」

 

 「揉め事はほんの些細なきっかけよ。それでも隠し持っていた感情を爆発させるには充分な出来事よ。」

 

 「ボクはどうすればいいんですか?」

 

 「はあ。いい?一度だけ本気のヒントをあげるわ。私はそれ以上のアドバイスはしない。いい?」

 

 「分かりました。」

 

 ボクは正直ここまでの話、何一つ理解できていない。

 

 だが、想やメイ、澄は大きな爆弾を抱えている。そう捉えることができるだろう。

 

 そしてその爆弾に火をつけてしまうのは僕だということだ。

 

 言い回しから考えて僕のこれまでの行動・考えのままでは大変なことになるということだ。

 

 僕は緊張のあまり固唾を飲み込んだ。

 

 空気が一変し、波音とカラスの鳴き声が不思議と不気味に聞こえてくる。

 

 『あなたは誰なの?それを考えなさい。』

 

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