最終話 素敵な場所

「どこ行くの~?」


 女の子の声が林に木霊する。

 しかし、猫は足を止める気配はない。


 だが、女の子が突然立ち止まった。


「森に入っちゃいけないってママに言われてのに…」


 そう呟いた女の子はしばらくしてから再び口を開いた。


「…ちゃんとおうちに帰れば怒られないよね!」


 そして再び歩き出した。



 猫はときどき振り返って、女の子がちゃんと着いてきているか確認しながらも進んでいく。


 女の子は猫を見失わないように必死に着いて行く。



 そうしてたどり着いたのは、開けた空間。


 そこには色鮮やかな花畑が広がっていた。


「すご~~~~い!!!」


 女の子は猫を追い抜いて走りだす。

 猫は女の子に少し驚くも、気を取り直したかのように歩き出す。


 そして、花畑の真ん中辺りにある少し大きな石の上で丸くなる。

 どうやらここがお気に入りの場所らしい。


 女の子は変わらずはしゃいでいる。


 かと思ったら、丸くなっている猫を見て突然その場で座り込んだ。



 ……何してるんだ?



 しばらく経って、女の子が立ち上がった。


 そして少し大きな石の上で丸くなっている猫の元へ歩き出す。


 猫は気配に気づいたのか目を開けた。


 女の子の手には小さな花の冠が握られていた。

 そしてそれを、猫の頭の上に乗せる。


「これあげる!今作ったの!友達の証ね!」


 そう言われた猫は「にゃ~お」と一鳴きした。


 それを聞いた女の子は嬉しそうにくすくす笑う。


「そうだ!ママにも持って帰ろ!」


 女の子はそう言って、また花畑に座り込んだ。




 言葉が通じなくても、仲良くなれるんだなぁ。

 面白いものが見れた。



 だが飽きたな。

 また次の面白いものでも探しに行くか。



 そう思った俺は「かぁ」と一鳴きしてから翼を広げて、青空へと舞った。

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友達に誘われて Remi @remi12

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