ケネルの手の内に

 砦のルヴェーラ達との戦いで大打撃を受けたケネル達はラファールのいる王都へと捕虜にしたセシルとアルマとジャンと数名の兵士を連れて戻っていた。敗走したケネルにラファールは激怒して責め立てた。


 「どうするつもりだ?!砦の戦いで負けた上に敵側には紫国の援軍が流れている様ではないか!!」


 「フフフッ。ご心配には及びません。」


 「何か策でもあるのか?」


 「いいえ、しかし私達の目的はもうほとんど完遂しております。」


 「どういうことだ??」


 「冥途の土産にお話しましょう、宰相殿。私達の目的は紫国に王族によって封じられた魔族の侯爵を復活させてこの世に更なる混沌をもたらす事です。封印の場所とそれを解く方法、そして準備が整った今、貴方は用済みです。」


 「な、なんだと?貴様まさか最初からこの私を欺いていたのか?!」


 「貴方とアダイト大公とシンオウが愚かなお陰でこの計画は上手くいきそうですよ、後は貴方の偽物に任せて安心してお眠り下さい。」


 「ち、近寄るな!衛兵!!」


 「無駄ですよ。」


 ケネルはラファールを魔法で動けなくするとゆっくりと心臓に短剣を突き刺していった。ラファールが死ぬとケネルの元に下級のデーモンが現れる。ケネルはデーモンにケネルの姿に化けるように命じた。


 「後は貴方達に任せますよ。私はアシューリスの元へ向かいます。」


 そう言うとケネルはその場から去った。その様子をたまたま見てたアルバ侯爵の側近は急いで侯爵に報告に向かった。


 グレーターデーモン達に捕まり気絶させられて城の牢屋に入れられていたセシルが目を覚ますと同じ牢屋にジャンと数名の兵士がいた、アルマが居ない事に気づいたセシルはジャン達にアルマはどうなったか聞くと別の場所に移されているようだと答えが返ってきた。

 セシルが何とか牢屋から出られないか考えているとアルバ侯爵と数名の騎士達が牢屋にやって来た。


 「アリス様とシンビス殿下はこの奥の独房のようです。」


 「そうか。この者達は?」


 「マラガン公爵軍の捕虜の様です。」


 「、、、、、、牢屋から出してやれ。」


 「はっ?はい!」 

 

 牢屋から解放されたセシルはアルバ侯爵に礼をいった。


 「どなたか知りませんがありがとうございます。」


 「私はアルバ候ディオスという。」


 「!?クレメンテ殿の港街を攻めた?」


 「確かに攻めたが本心からではない。娘を人質に取られていてな、、、。貴公はデメルダ男爵領内のものか?詫びてすむ話でないがすまない。」


 「私はセシルです。そのご令嬢は牢屋に捕らわれているのですか?」


 「そのようだ。この牢屋から城の外にでる道がある。逃げるつもりなら貴公らも一緒に来るか?」


 「もう一人仲間がいます。見捨てては置けません。」


 「その仲間の性別や年齢などは?」


 「茶色いショートヘアの若い娘です。体に傷を負っています。」


 アルバ侯爵は側近の一人に知らないか聞くと独房に入れられている可能性があることを答えた。それを聞いたセシル達は装備を取り戻すとひとまずアルバ侯爵と行動を共にすることにした。


 一行が独房の続く通路の手前の部屋を開けると傷ついたアルマが横たわっていた。その様子を見たセシルとジャンがアルマに駆け寄る。


 「良かった!まだ息ががあるわね」


 「この薬を塗りましょう。」


 アルバ侯爵の騎士の一人がアルマの体に薬を塗る。


 「傷が深いため早くに医師に見せる必要があります。」


 「セシルよ、この娘の事は私の部下に任せてもらえぬか?」


 「、、、、、、。」


 「それならボクも残ります!!」


 「ジャン君、、、、。」


 「アルマさんの傍を決して離れません。」


 「分かったわ、ジャン君。よろしくお願いするわね。」


 そして一人の騎士とジャンと別れていくつかの空の独房を開けていくと中央の辺りにシンビス王子が捕らわれていた。


 「殿下!!」


 「アルバ侯爵!」


 「お怪我はありませか殿下?」


 「私は大丈夫。奥にアリスが捕らわれている助け出そう!」


 「はい、殿下ありがとうごいざます。」


 シンビスに言われた通り奥の独房を開けるとアルバ侯爵の娘のアリスが座っていた。 


 「アリス!!」


 「お父様!!」


 アルバ侯爵はアリスに駆け寄るとつよく抱きしめると暫く娘を抱擁していた。


 「アリスよシンビス殿下とこの者達と共にマラガン公爵の元にいきなさい。」


 「お父様は?」


 「私はまだこの城でしなければ行けないことがある。お前達!セシル殿、どうか殿下と娘を頼む。」


 「分かりました。、アルバ侯爵殿」


 そしてセシルはシンビスとアリスを連れては数名の騎士と捕虜になっていた砦の兵士達と共に城を後にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る