第11話

「……なに?」



嶺亜は不機嫌丸出しといった声でスマホを耳に当てる。



何を言っているかまでは分からないけど、スピーカーから少し漏れる声はよく聞き覚えのあるものだった。



藤間那月……正真正銘あたしの兄だ。



嶺亜とあたしの関係を知っているのは、今のところ兄貴一人だけ。



……いつか、ちゃんとヒロちゃんにも言えたらいいなと思う。




「あぁ?分かってるって………。はいはい。うるさいお兄サマだなぁほんとに」



僅かに笑みを浮かべる嶺亜の表情は、文句を言いつも本当に嫌がっている様子ではなかった。



「ん、じゃーな。また後で」



電話を切った嶺亜はあたしに視線を向け大きく手を広げた。



「エーリちゃん、おいで」

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