第十九回
「い、いらっしゃいませぇ…… 丫環茶……
僕は長安の大通りに立ち、通り過ぎるプレイヤーたちに笑顔でお辞儀しながら、手にしたチラシを配っていた。
――でも、すぐになくなっちゃった。みんな、意外とノリがいいんだな……。
「えっと……あ、ありがとうございます……いらっしゃいませ……」
こ、こんな格好……何なんだよぉ……。
風が冷たい……。太ももがスースーする……。そんなに見ないでよぉ……。うぅ、恥ずかしい……。
「きゃー! かわいい! 写真撮っていいですかっ?」
女の子プレイヤー二人に左右から囲まれて、僕は完全に挟まれてしまった。
いや、むしろ君たちのほうがよっぽど可愛いんだけど!?
ちょ、近い近い! 香水の匂いが……うわぁぁぁ!
――カシャッ。
うわあああああ……恥ずかしい……恥ずかしすぎる……っ!
「……恥ずかしい……」
もう、ダメだぁ……。地面に沈みたい……。
――本当は、こんなのじゃないはずなのに。
どうして僕が看板娘なんてやってるんだよ……僕は、男なのに。
「しゃがまないで。お客さんから見えなくなるから。」
「で、でも……」
恥ずかしくないの? その服……。
「別に。通学のスカートと大差ないでしょ。」
「だ、だって女僕装だよ……?」
「JKもコスプレみたいなもんでしょ。」
「……なっ、
「使えないわよ。」
「じゃあ、なんで……」
「君がわかりやすすぎるの。」
「……裕貴と亞美にも同じこと言われた……本当だったんだ……」
僕がぼそっと言うと、
その目にはどこか慈しみのような光が宿っていて、だけど――太陽を背にした彼女の顔は影に包まれて、
まるで映画で見る、すべてを操る悪女みたいに見えた。
「大丈夫。君は本当に可愛いから。私が保証するわ。……って、またしゃがんでるじゃない!」
や、やめてよぉ……そんな破壊力ある言葉をさらっと言わないで!
「可愛いって、悪いこと?」
「僕、男だよ!」
「でも、」
「男の人って、正義が好きなんでしょ? “可愛いは正義”。だから男は可愛いのが好き。」
「ど、どんな理屈だよそれ!」
「違うの?」
「違うに決まってるでしょ!!」
僕が必死に反論していると――周りからざわめきが起きた。
「……可愛い……」
「姉妹喧嘩してるみたい……」
「負けず嫌いな妹と、余裕たっぷりなお姉さん……」
「尊い……!」
――カシャ、カシャ、カシャカシャカシャ!
「や、やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!! 写真撮らないでぇ!!」
顔が真っ赤になって、頭がぐるぐるする。
お願いだから、もう僕を見ないで……!
ていうか、班長! あんたまで夢中で撮ってるんじゃないよぉぉぉぉぉ!!!!
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