第十四回
白い閃光が一瞬、視界を横切った。
「
一般的に横薙ぎや突き下ろしが多い
脚を失った土蜘蛛はさっきまでのような機敏さを失い、
……ああ、なんで僕、あんな無茶したんだろう。
土蜘蛛のHPが20%を切った頃、突然くるりと背を向けて逃げ出した。
なんで暴走じゃなくて撤退? それに、これって任務失敗になるのかな……。いや、それよりも、これ、完全に僕のせいじゃない?
無力化が解けた僕は立ち上がり、
「
白光が土蜘蛛の胴を貫き、反対側へ突き抜ける。断末魔の痙攣のあと、巨体は地に沈んだ。
戦利品を回収して
「紫色の光がシュッて走ったと思ったら、蜘蛛のHPが半分以上吹っ飛んでて、超すごかった!」
「い、いや……そんな……」
褒められても、全然胸を張れない。だって、あれは僕の失敗の尻拭いだし……。
「超スピード? それとも同時多段ヒット?」
「でも針って威力低いよね? 何発当てたらあのダメージになるの?」
「もしかして攻撃力アップの効果が乗ってる?」
二人の視線が一斉に僕に突き刺さるが、やがて同時にそらされる。
「ま、他人のスキル探るのはマナー違反だしね」
「なんで?」
僕が首を傾げると、
「スキル構成や能力はプレイヤーのアドバンテージだ。みんな唯一無二の戦い方を持ってる」
「それに、このゲームはPVPがある」
「なるほど……」
つまり、対人戦があるから各自の戦法は切り札扱いってことか。ふむ……。
そんなことを考えていたら、ふわりと甘い香りが鼻腔をくすぐり、左腕がやわらかい感触に包まれた。
「ありがとね。さっき、君がいなかったら、私たち負けてた」
耳元でそっと囁かれた声と香りが脳まで入り込み、頭が一気に沸騰する。亞美のときとは全く違う感触に、顔が爆発しそうなほど熱くなる。
その張本人はすぐに僕から離れ、数歩先まで駆けてから振り返り、大きく手を振った。
「帰ろっか」
胸の奥の重苦しさは、少しだけ軽くなっていた。
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