早朝から家を出発し、山々へと足を踏み入れた主人公の少年・トキトとじいちゃん。
朝露が残る山林の小道、聞こえる鳥のさえずり。
鼻腔をくすぐる木の香りに、草木が静風にゆれる音が心地よい。
じいちゃんの軽妙な語り口に、冒険への期待がふくらむトキト。
トリのように高く鳴くシカ。
神の使いとしての存在感あるキツネ。
今までにない、自然との出会いの数々。
トキトの好奇心を満たしていくホタル――まるで小さな呼吸が伝わってくるようなやわらかな描写がとても印象的です。
日々の喧騒を離れ、自然のセラピーを通じて心を休めたい。
純粋な少年の好奇心に今の自分の心の在り方を重ねてしまう。
時間を忘れ、ゆったりとした心地――想像の中でしみじみと身を委ねたくなる短編です。