第21話 ルナ
戒斗:「君は、一体?……」
追われていた子が振り向き俺と牡丹を見て答える。その瞬間まるで時が止まったかのように雑踏の音が止まる。
ルナ:「ルナ……」
そうしてルナの声が消えるとともに彼女の姿は雑踏に消えた。
牡丹:「彼女は一体……」
牡丹とぽかんと今何が起きたのか把握しきれぬまま、イベントも終わりふわふわした状態で家にいた。
ー自宅ー
戒斗:「ただいま……」
何処か腑に落ちないまま、帰宅。しかし家に入ると、ルナが居た。
戒斗:「!?」
俺と牡丹だけが。その状況に飲み込めずただ傍観していた。が、リアや燐。ミライや両親は把握していた。
燐:「おかえり。どうしたの?そんなにボーッとして。」
戒斗:「いや。そのなんでルナが居るんだ?」
ルナ:「ふふ。奴らが貴方たちに手を出さないって言うから。避難しに来たの。それに人間の家族っていうのも気になったし。」
と悪戯っぽく笑う。
戒斗:「避難?お前、あの組織に……?」
ルナ:「うん。少し前までS.T.U.に捕まってた。私の魔力の適正視認能力、利用されてたの。」
牡丹:「魔力……視る?」
ルナ:「そう。あなたたちの力も、組織は興味を持ってた。だから安全なうちに教えてあげたくて。」
戒斗:「教える……?俺たちに?」
ルナ:「ふふ。そう。私があなたたちに少しだけ魔法を教えるの。」
そう言うと、牡丹の服を着てるがサイズが合わず少しダボッとした格好のルナが俺の前に立った。
ルナ:「さてと。、皆の力を見せてもらうわ。みんな手を出して集中して。」
俺と牡丹、燐は言われるまま手を前に出す。少し意識を集中させると、手のひらにフワッと小さな光が集まり浮かんだ。牡丹が目を丸くして息を呑む。
牡丹:「わっ……本当に光が……」
ルナはふふ、と笑いながら俺の手の光をじっと見つめる。
ルナ:「面白いわね。戒斗、あなたは魔王と同じ性質を持ってるのね。不思議。」
俺:「え……そんなこと言われても……」
燐も手を出す。指先に光が集まり、少しずつ形を成す。
ルナ:「そう、集中して、自分の力を感じるのよ。そのまま流れに身を任せて。」
燐:「……なるほど、こうやるのね。」
そのとき、ルナはリアの方に視線を向け、軽く首を傾げる。
ルナ:「リア……あなたは教えなくてもいいわね。」
俺:「え、なんで?」
ルナ:「だってあなたは獣人でしょ?体の感覚が魔力の流れに最適化されてる。教えなくても自然にできるのよ。」
リア:「そっかー。でもアタシもちゃんと勉強したかったけど。そう言うなら理由があるのよね。残念だけど戒斗たちも頑張って。」
牡丹:「すご……やっぱりリアって特別なんだ。」
燐:「……ちょっと悔しいけど、仕方ないか。」
ルナ:「じゃあ戒斗、牡丹、燐は続けて。私が少し手伝ってあげるわ。」
手のひらから小さな火花を散らし、光の輪を描く。目に見えるほど差がはっきりしてきた。戒斗は黒く、燐は赤く変色したが、牡丹だけは変わらない。
牡丹:「私だけ色が変わらないのはどうして?」
ルナは牡丹の手をじっと見つめる。
ルナ:「あの論文は知ってる?」
戒斗:「異世界の存在についてのやつか?」
ルナ:「そう、それ。あれでも書いてあったと思うけど、人にはそれぞれ適正があるの。今回の色を見る限り、戒斗は闇属性が強いみたいね。燐が火属性。そして……あれ?」
ルナはふと眉をひそめ、牡丹の手の痕跡をじっと観察する。
ルナ:「あなた、前に魔法を使ったことがあるわね?無意識でも力の痕跡は残るもの。」
牡丹は少し驚いて顔を赤らめる。
牡丹:「そ、そう……かな……?」
戒斗:(……あの時……俺が助けた時だ……)
あの時、牡丹は無意識で回復魔法を使っていたんだ……
燐:「すごい……牡丹、無意識でも力があったんだ」
ルナ:「だから今、この中だと力としては1つ頭が抜けてる状態ね。本当に面白いわね、無意識って言うのは……… でも教える量は同じなのが残念だわ。」
と首を横に振ったルナ。
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