朝のホームルーム(6)

 いやいや。さすがに気づくだろう。私はあなたとの進展を、逐一書いていたんだ。もしも、私のツイートをすべて見たのなら、その日々を、そのあゆみを、あなた自身が認知できないはずがない。

 だって、あんなに真剣に付き合ってくれたから。きっと、私のスマホを通してツイートを見たとたん、驚愕したはずだ。

 私が激しく動揺しているのにもかかわらず、渡辺先生やクラスは、いつもの表情を取り戻していた。渡辺先生は早々と教室から去り、みんなは一限目の準備をはじめている。

「じゃあ、誰からにしよっかな……」

 誰から、と言った玉井静香が、いま私の目の前にいる。

 少し俯いた前髪から覗けているであろう私の両眼を、片方ずつ眺めているのだろうか、彼女の瞳が雑に動いている。

「菜奈ちゃん」

 私は、きちんと玉井静香の顔を見ることができない。

「菜奈ちゃん、スマホ、まだみてなかったでしょ? さっきまでみんな取り合うように見てたからさぁ」

 取り合う、と言っても、玉井静香のグループの数人だけがそうしていたんだけど。

 なぜか微笑んでいる彼女はスマホを差し出した。しかし、私はスマホを受け取らないことにした。

 どうして彼女は、私を真っ先に選んだのだろう。私はいま、何と言えばいいのだろう。

「菜奈ちゃん?」

「ごめん、やっぱいいや」

「いいの? どうして?」

 どんな素振りだって、態度には出さないでおく。

 そういうことが、うまくできているのかは、誰も教えてくれない。それでも、私は利口な女の子としてこの教室で扱われ続けてきたのだ。

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