本作は現代ドイツを舞台に、警察による殺人事件の捜査と、犯罪組織に足を踏み入れていく兄弟の物語を並行して描くクライムサスペンスです。
サイバーセキュリティという専門領域を、警察の捜査と犯罪組織の暗躍、そして家族の物語を結びつける軸として活用しているところは、初めて触れる切り口でとても面白いです!
巧みなミスリードと複数視点の切り替えによって、読む側としては捜査側と犯罪側の双方から事件を追い、同じ事実が違う意味を持つ面白さを味わえるようになっています!!
お勧めポイントは、優秀な技術者でありながら薬物依存によって転落した兄テオドールと、BKAの技術者として捜査に携わる弟クラウスの対比です。
かつては近しい存在だった2人がそれぞれ異なる事情を抱えて生きる姿に、単純な善悪では割り切れない人間ドラマが見えてきます。
また、クラウスの同僚たちも魅力的で生き生きとした人物描写も見どころ。イチオシはシャルロッテです。彼女の妄想にはいつも笑ってしまいます。
アクションを見せれば、まるで海外ドラマを見ているよう。
緻密で読み応えのある文章に、思わず頬が緩むようなユーモアが自然に溶け込んでいます。
専門的な情報を織り交ぜながらも会話はセンスよく面白い、そして緊迫した展開の合間に垣間見える登場人物たちの個性や人間くささにすっかり嵌りました!
夢中になって読める作品です!
現代ドイツを舞台に繰り広げられる社会派ミステリ。網の目のように張り巡らされた謎と意外な展開の連続で、読めば読むほど闇の中に没入していくような快感を覚えます。
サイバー犯罪やマフィアの闇、麻薬中毒など、ヨーロッパ裏社会の暗部を描くリアルな描写もスケールが大きく、臨場感のある筆致が魅力です。
ストーリーと同時進行して、登場人物たちの人間味とその人生が少しずつ浮き彫りにされていくのも読みどころ。主人公の鑑識官クラウスと、その兄テオドールとの複雑な確執と血のつながりの重たさが、ヒューマンドラマとしても物語に奥行きを与えています。脇役たちもひとりひとり粒が立っています。
知的で端正な文章のなかにもふんだんにユーモアが混ざりこんでいて、緩急のある語りが飽きさせません。
本格的なクライムサスペンスと人間ドラマにどっぷりとはまりたい方に、全力でお勧めしたい作品です。