灯台。

　Ligthouse

　その役割は、船舶航行の安全の為に作られた航路標識。

　遠い昔から灯されて、人々はそれを目印として海を旅した。

　天空の先にある北極星の様に、自分の位置を知らせる特別なモノだった。

　今はＧＰＳなどの技術の発展の為、灯台は航路標識としての役割の終わりを告げられていた。

　古いモノは、新しいモノに置き替えられる。

　古いモノは、用無しとなり、捨てられる。

　ローテクの方が、良いこともあるのに。

　例えば、踏切でエンストしたガソリン自動車をセルモータで動かし、線路内から脱出させるような事。

　ローテクには、力ずくで何とかすることができる余地があるのだが。

　灯台が高度な機器に置き換わったとしても、完璧な代替とはならなかった。

　精密な機器は、太陽フレアの磁気異常や天災や戦争による電源断には耐えることができないからだ。

　そのことを知っている人たちやこの灯台に特別な思いを持つ人たちは、保存灯台や参観灯台として存続させ、維持するために、灯台守が雇われていた。

　昔々、人々は、暗い闇の中を進む目印を探していた。

　それは、見つめていると吸い込まれそうになる夜空にあった。

　一面に散らばる星々の中に一際輝く星。

　他の星とは異なりいつも同じ場所にあった。

　それを目印に旅を続けた。

　神が導く星。

　人を導く星。

　その星は、北極星と呼ばれた。

　実は、この北極星は、いつも同じ星ではなかった。

　星にも寿命がある。の

　寿命が尽き、光を失った星の位置にも星があった。

　人々は、違う星だと気づくこともなく、北極星だと信じていたのである。

　他の星が北極星と言う名を引き継いでいた。

　北極星の役割の星が交代するように、灯台守もまた交代する。

　交代することは、亡くなってしまうと言うことだから。

　何人もの人が交代して、この灯台を守っていた。

　時は流れ、技術は更に進歩し、人々の生活環境も大きく変わった頃、灯台守の命がつき、新しい灯台守が着任しようとしていた。

　灯台守になる者は、色々な場所で様々な経験をして、この灯台に辿り着く。

　そして、やっと静かに自分を見つめる時間を手にしていた。

　これは、交代前の灯台守のイーグレットとシオンと灯台守を引き継ぐ、スミレとクリナムの物語である。