眠れぬ子
倉咲
裏切り者のノクス
少年が無人の村の中を息も絶え絶えに走り抜けていく、少しでも一秒でも遠く長くと恐怖に震えて今にも動かなくなりそうな足を必死に振り回して。彼はのどかな村で平和に暮らしていたその日常は突如村を襲った化け物にたやすく崩されたのだ。
それは燃えるような赤き鱗に身を包み長大な一対の翼を悠々と羽ばたかせながら少年を追いかけるもの・・・竜が金の瞳に愉悦にも見える憎しみをのぞかせて、口端からはチロチロと炎を漏らしながら邪悪な笑みを浮かべたまま必死に走る少年の頭上をゆうゆうと通り過ぎ逃げ道をふさぐが如く少年の前に降り立つ。
少年はすぐに方向転換をしようとよろめきながら急停止する。少年は考える、後ろは村のみんなが馬車で逃げていった方向。後ろに行くことは考えられないならば左右のどちらかしかないそう思い、ずっと前を向いて走ることに集中していた目で周囲を見渡す。
周囲には驚愕の光景が広がっていた。左右を炎の壁がふさいでいたのだ。少年は炎の壁の終端を見ようと後方に目を向けるが炎の壁に見渡す限り終わりなどなく、だが後ろにだけはわざと逃げ道を残したように、いやまず間違いなく残したのだろう一直線に炎のない一本道が残っている。
少年にその道を駆け抜けてみんなを危険に晒すことなど考えもつかなかった、炎の壁を突き抜けられないか考える。炎の壁からは焼き付くような温度を感じない、それどころか村の木造の家に燃え移っていく気配も見せない。だからこそ恐ろしい、こんなに高度に制御された魔法の炎だ、踏み入った瞬間少年の体は枯れ葉がごとく燃え尽き死に絶えるだろう。
だから少年は恐ろしい赤き竜に立ち向かう覚悟を決めて振り返る、赤き竜は少年を待っていた。その口に炎を溜めながら、赤き竜と少年の目が合う赤き竜は少年の覚悟を決めた雄々しい目をみて感じ入るものがあったのだろう、愉悦に顔を歪ませて雄たけびを上げるが如く炎のブレスを空に放つ。
ブレスはどこまでも伸びていき雲を天を焼き焦がしていく。少年は赤き竜に駆け出していく、これが最後の好機に違いないと考えたのだ、だが少年の手に武器はない母からもらった短剣も赤き竜から逃げるには少しでも身軽でなければならなかったゆえ捨ててしまった。だが少年の体は鍛えられている、普段の農作業で村の戦闘訓練で、だから無防備に空に向けて伸ばした竜の首に飛び着き頭を目指し上っていくことができた。
少年は赤き竜を殺せるなどとは考えていなかった。少しでも時間を稼ぐのだ、村のみんなが逃げる時間を異変を見つけてくれた騎士たちが赤き竜を討つため村にくるまでの時間を。
赤き竜はうっとうしそうに蚊を手で払うようにでたらめに頭を振りたくる。だが少年は離れないそれどころか疲れ果てた体に鞭を打ち頭まで登り切って見せた。登ったと同時に右腕を振り上げ拳を痛いぐらいに強く握りしめ、金の瞳に向けて全力でこの一撃に人生を懸けるそう決めて拳を振り下ろす。体はその思いに応えてくれた火事場の馬鹿力を発揮し少年のこれまでの生涯で最も力強い一撃を放ったが・・・。
少年はこう思ったはずだどれだけ恐ろしい竜でも目であれば柔らかいはずだと、それはあっていた、あっていたが人と竜ではあまりに基礎性能が違いすぎた。拳と目、人であればわかりきった結果が怒ったはずのそれで後者が勝るほどに。
少年の拳は火事場の馬鹿力で殴ったせいか指は曲がり骨まで露出してしまっている、少年が痛みに震える少しの時間で血も噴き出し始める。それに比べ赤き竜の瞳はいささかの変化も見せず殴られた事実などなかったように見える。それどころか赤き竜は少年の企みが失敗したことを悟って振り落とすべく行っていた首の動きを止め、口角をにやりとあげる余裕があるほどだ。
少年は血の噴き出した手のひらを見て、もう一度激痛に耐えながら右手を金の瞳に振り下ろす。今度は目をつぶすためではなく血で目を汚し少しでも視界を遮り時間を稼ぐために。
この一撃は成功した見事赤き竜の視界を溢れ出した血飛沫が遮って見せる。だからこそ成功したからこそ赤き竜は怒りの咆哮を上げその前足で少年を弾き落してしまう。精魂尽き果てた少年にもはやそれにに抵抗するすべはなく赤き竜の頭部から弾き落され固い地面に叩き落される、少年の体には大きな落下の衝撃と竜の力が合わさり立ち上がれぬほどに体全体が壊される。それでも必死に腕で上半身を起こし赤き竜を睨みつける。
赤き竜はそんな少年の姿を見て労いの言葉を吐くような慈愛の表情を見せながら口に炎を溜めブレスの準備を始めた。少年にブレスを避けるすべはない腕は上半身を支えるだけで精一杯、足は先ほどからピクリとも動いてくれないのだからいや万全の状態でもあの天まで届いたブレスを避ける術はなかった、所詮は今までのすべては赤き竜が茶番に付き合っていたにすぎないのだ。
だから少年は睨みつける自分を殺す相手に自分を刻むために死後に戦った自分を誇れるように、村のみんながこの赤き竜から逃げ切れる薄い希望を光霊様に祈り続けるために、もうそれしかできないのだから。
赤き竜は好敵手を名残惜しむような表情をしながらその竜炎で少年を焼き尽くすべくブレスを放った、その瞬間少年は信じられないものを見た。
赤き竜の翼に一筋の闇が突き刺さり地面に赤き竜の翼を縫い留めたのだ。赤き竜は体勢を崩したがブレスの方向まで崩すことはなかった少年に向かい炎のブレスは迫ってくる。
少年は少し安心していた竜の翼を地に縫い留める強者の出現に、赤き竜が翼を失いもう村のみんなには追い付けない事実に、あの炎ならば火傷の痛みに侵されることなく死ねる事実に、自らの時間稼ぎに意味があったことに。だからもういい目を閉じ死の運命を受け入れられた。
・・・・・・少年は困惑した。いまだ意識が続く事実に死後とは意識が地続きなのかと思いながら目を開く。
目を開いた少年の前には首を失った赤き竜と相対する右腕に螺旋に渦巻く刺突剣を持ち、左腕に魔石を埋め込んだ
「少年、もう大丈夫だ。悪しき竜はこの光国が騎士ノクスが討ち取った」
ノクスが少年を優しく抱き上げ、揺らさぬようにゆっくりと歩き出していく。
「あっ・・・あっ、ノクス・・・暗き死のノクス」
「知っていてくれたのか嬉しいな。そうだ君の名を教えてくれないかい勇敢な少年」
「イクサ…ただのイクサ」
「そうかイクサ、いい名だ君の…くっ」
何かを言い切る前にノクスがイクサを庇うように覆い被さった。焼けた肉の匂いがイクサの鼻をくすぐる。
「イクサ少年、少し乱暴をする」
「うっ…わーー!!」
黒い獣革の外套と共にイクサは放り投げられた。体は天高く宙を舞い、慣性に従って急速に地面に吸い込まれていく。衝突の証に鈍い音が響く。
「えっ…痛くない?」
「イクサ少年、そこから動かないでくれ。そうすれば君にもう指一つ触れさせない」
イクサに話しかけながらもノクスの視線はたった一点に集中していた。
「あまりにも無様ですね」
その男は空を歩いてやってきた。ゆっくりと優雅にまるで舞踏会の主役が登場するように。
男はこんな場にいるにはあまりにも似つかわしくない格好をしていた。金糸を束ねたが如き髪、絵画の王子様のように美しい顔には地位の高さを示すように繊細な装飾が施された金のモノクル、高く細い体、背筋にピンと一本の線が入ったように美しい姿勢、そんな体を飾り立てる黒を基調として金と赤で彩られた豪奢なロングコート、その雰囲気はまさしく貴種のそれであった。
「お久しぶりです先生。第一王子派の光霊騎士に追われているくせにこんな最前線の僻地に何しにきたんですか?」
「分かりませんか?…はあ〜つくづく愚かなグズですね」
「久しぶりにあった、教え子にグズだなんて酷いことを言いますね」
ノクスに向けて火球が放たれる。腰の鞘から刺突剣を抜き放ち、闇を纏った斬撃にて火球を断ち切り霧散させる。
「ふむ…魔術斬りですか、剣の腕だけは上げたようですね。グズはグズなりにに励んでいるということですか」
「先生は手の早さに磨きをかけましたね」
空からの雷光、さしものノクスも雷速の速さには、反応しきれなかったのか剣を盾に防ぐことしか出来ない。
「くっ…」
「口は災いの元だと、教えたはずですよバカ弟子。」
ノクスは多少フラつきながらも剣を天へと構え、鋭く冷たい殺意を放つ。
「これが、先生との最後の会話ですからね。軽口の一つ二つ出ようというものです」
空の男は不愉快そうに目を細める。
「フン…覚悟は決めていたということですか。」
「先生いや、アルバ・エリュシオンあんたには返しきれない大恩がある、それでも俺は俺の夢のためにあんたをここで終わらせる」
(先生が俺の前に姿を現したということは、絶対に罠がある。だからこそ、速攻で致命の一撃を叩き込んで殺す)
ノクスが黒い闇となって真っ正面から、真っ直ぐとアルバの首を狙って宙に飛び上がる。
「起きろセレスト、全てを掻き混ぜるぞ」
呼び声を合図として刺突剣が闇を纏いながら螺旋のエネルギーを発する。その状態で放たれた渾身の刺突をアルバは素手で掴み受け止めた。
「あの
「分かってた。あんたならそんくらいするだろうさ」
ノクスは螺旋を描き続ける刺突剣を手放し、宙を蹴って側面からアルバの背後に周りこみ左腕のパイルバンカー炸裂させる直前、首なしの竜がアルバごとノクスを叩き落とす。アルバが起き上がりながら苛立ったように目を細める。
「カスの使い魔が」
ノクスが素早く起き上がり、先の二人を叩き落とした攻撃の際、竜の手に刺さった刺突剣の刃を闇の異能で伸ばしきり、そのまま竜の体を真っ二つに両断する。
「起き上がりなさい、死体ども」
二つに両断された竜の腹の中から、アルバの死霊術によって10体のボロボロにくたびれた鎧を着た骸骨たちが立ち上がり襲いかかってくると同時にアルバが詠唱を開始する。
「その鎧、そうかやはり殺されていたんだな。アルマンド卿、貴方の相手が俺で良かった」
骸骨たちが生前の名残だろうか一糸乱れぬ連携にて、ノクスを攻め立てる。骸骨たちが纏う、光の残滓によってノクスが纏っていた暗い闇の衣は消し去られ、劣勢に押しやられていく。骸骨たちの剣の連撃を弾き続け一体二体と着実に骸骨の数を減らしていく。だがノクスは隙を見出したアルマンド卿の骸骨に大楯によるシールドバッシュを決められ大きく吹き飛んだ。
「狙い通りだ。セレスト」
螺旋の渦となった闇をアルバに向けて撃ち放つ。詠唱を中断出来ないのか、それとも避ける必要もないと感じたのか。アルバは真っ正面から受け止める。
(先程のも今のでも傷一つつかないのはどうなっている?あんな理不尽な防御性能は知らんぞ。それに先ほど感じたあの匂い中毒者共特有の)
一人突出してきた骸骨の頭蓋を吹き飛ばしながら、詠唱の内容に聞き耳を立てる。
「異界の門より来たる愉悦と憎しみの集積、創来しろ。エルドラド」
詠唱の終わりと共に燃え盛る鉄の隕石が降りてくる。
「まずい」
ノクスは動けないイクサの元に走り出し、妨害してくる骸骨たちの剣を槍を受け、傷をつくりながら隕石の落ちきるギリギリでイクサの元まで辿り着き、黒い獣革の外套を広げる。
「貴き山の眷属よ、勇ましき猪よ同胞たる者に力をお貸しください。広がれ闇夜の帷よ」
円形の黒い霧が発生し、二人を包み込む。隕石が迫る中アルマンドの骸骨が大楯に光の力を込めて打ち付け、黒い霧を振り払う。
「うわっ…霧が!!」
不安で声が漏れたイクサをノクスは優しく抱きしめて、初めてイクサの腕に刻まれた刻印に気付く。
「イクサ少年、一つ頼みがあるんだ。あの君のことを認識すらしていない傲慢野郎に一泡吹かせたくはないか」
轟音が鳴り響き、辺り一面は焦土と化した。
只人では、近づけない超高温に村の家々は焼け落ち、未だ焼け残る木材だけがその痕跡を残している。その被害の原因たる隕石が内側から弾け飛び、溶けた鉄の礫を撒き散らしながら焼け溶けた鉄で体を構成した竜が生誕する。
「ギャハハハハどこだノクス出てこいよ!!!さっきはとんだ挨拶をぶっかましてくれやがってよ。ぶっ殺してやらぁ」
威勢よく騒ぐ竜の真下から巨大な闇の剣が現れ、頭と胴を断ちわける。
「…?ちっ…罠か」
ノクスは足元からしのび寄っていた溶鉄の腕を間一髪で躱し、降りかかる溶鉄の塊たちを斬り払う。
切り取った頭が溶けるように胴体と融合し、元の竜の形状を取り戻していく。
「てめぇ!!二度も俺の首をかっ斬りやがったな!!」
「エルドラド、お前弱くなったな」
「ああ!!!ふざけんなよ」
挑発に怒りを滲ませる溶鉄の竜がその身体を乱暴に振り回し、溶けた鉄をあちこちに飛び散らせながらノクスを殺さんと暴れ回る。ノクスは反撃に見える限りの急所を斬り離していくが、斬った側から融合して戻り意味をなさない。
「正攻法で退けるのはやはり無理か、勝負の行方はイクサ少年次第…か。情け無いざまだ」
「うっ…やばっ」
急いで次の攻撃を避けようとした時には足は凍りつき動かなくなっていた。ノクスは焦りに顔を歪ませる。
「ハッハー、テメェはここで死んどけや」
溶鉄の竜は竜の形を捨て去り、赤黒い津波となって押し寄せる。ノクスは凍りつき続ける体を必死に動かし続けるが努力も虚しくその体は鉄の津波に覆われて肉が焼け、体内の水分は沸騰し生命の灯火は消え去っていく、やがて遺体を納める溶鉄の墓標だけが残された。
ガン…ガン…ガンガンガン…鉄の墓標が爆発し、弾け飛ぶ。現れたのは全身の皮を焼け爛れさせながらも何とか生命を繋いだノクスだった。
「ハァハァハァ…」
息も絶え絶えな中高く掲げられた左腕からは硝煙を吐き出すパイルバンカーそれを足元にも炸裂させ高く飛び上がり、空を足場にして一直線に溶鉄の海に飛び込んでいく。
「見つけたぞ。」
ガラガラの声を発して氷結の魔力を辿り、溶鉄の海を螺旋の一撃で掻き分け溶けた竜の内に隠れていたアルバの元までノクスは辿り着く。
「私を見つけてそれで、そのボロボロな体でどうするつもりですか」
余裕そうなアルバを柔の技でノクスが溶鉄の海へと軽々と投げ飛ばす。
「近接戦なら俺が上だ」
溶鉄の海に投げ出されてなおアルバは火傷ひとつせずそれどころか溶鉄に補助されて立ち上がる。
「だからなんです。今最大のチャンスを自分で棒に振ったようですが?」
「それはそうだろうな」
ノクスが自らの影から外套に包まれた物体を取り出す。もぞもぞとそれは痙攣し、芋虫のようである。
「起きてくれ少年!少年!!!」
ノクスが外套を広げればイクサが呆然と目を見開き、口からは涎が垂れ、酸っぱい匂いまでしていた。
「イクサ!!お前の村を襲ったあの似非竜に一杯食わせてやるのだろう!!」
鼓舞を聞いてかイクサの目に焦点が灯る。
「ひぇっ化け物」
イクサはノクスの溶けた鉄にさらされ焼けただれて皮膚がところどころ剥がれた顔を見て悲鳴をあげた。
「これを握れ、覚えているな」
「んっ…ああやってやる」
ノクスが渡した赤く煮えたぎる宝珠を掲げてイクサは吠える。
「エルドラド、無限たる異界の神よ。その分霊よ。刻印に従い敵を縛り燃やし殺せ」
味方だったはずの溶鉄の海がアルバに襲いかかる。アルバは自分の胸元を調べて、驚愕の表情を浮かべながらも空に飛び上がり、回避する。
「本当に使えない使い魔が」
「嗚呼それは俺も思うね」
アルバより先に空に飛び上がっていたノクスがパイルバンカーの爆発によって叩き落とす。
「なっ…!?くぅ盗人がぁ〜」
アルバに逃げ場はなく溶鉄の海に絡めとられ閉じ込められていく。
「カレンディア、撃ち放て」
「くっ…これは空の要塞のぐっ…がぁぁぁぁ」
ノクスの合図に合わせて光の柱が降り落ちる。神秘的で苛烈、神の裁きを連想させるその一撃は遥か遠き光霊の御座たる光都より放たれた都市破壊の砲撃である。その光の特性は浄化にして癒し、目標ではないノクスとイクサの体を癒していく。
光の柱は長く長く降り注ぎ世界は閃光で満たされた。治った頃には着弾地点に深く巨大な穴がぽっかりと開くだけで溶鉄の海は消え去っていた。
(エルドラドが消えている。イクサ少年は……気絶したか、ならば行くしかないかあの穴に)
ノクスは光の柱が作り上げた穴に勢いよく落ちていく。瞬間頰をレーザーが掠める。
「くっ…迎撃が早すぎるだろ」
何本も打ち出されるレーザーを剣で弾き、闇の盾で防ぎながら底を目指して落ちていく。中腹ほどまで迫ると氷の壁が道を塞いでいた。
「時間稼ぎか、洒落臭い」
パイルバンカーの爆発で道を切り開く。
「光霊の眼差し」
氷の壁が崩れると共に眩い光がノクスの体を照らし焼く。光の前に闇の盾は一切の意味をなさず痛苦が体を満たす。
「こんなものでこんなところで死んでたまるかー!!」
首にかけたネックレスを強く握りながらノクスは体を貫く光線を絶叫を噛み殺しながら耐え忍ぶ。
「見えた!!麻薬王の秘薬は浄化の光にて消え去った。覚悟しろアルバ!!ここがお前の終点だ」
ノクスが底に至る。ノクスの視界に映るアルバは光の剣を構え未だ諦めてなどいなかった。最後の勝負が始まる。
「貴方が死になさい!!馬鹿弟子!!!」
両者の交差の末、落下速度を乗せたノクスの剣がアルバの体を刺し貫いた。先までの全くダメージが入らなかった原因である、秘薬は光の柱が持つ浄化特性により消え去った。ただ今はまだ暖かい肉塊がひとつ生まれただけである。
ノクスはアルバの体により深く深く死後肉体が辱められることがないように剣を差し込んでいく。
「さようなら、先生。俺は目指すよあの頂を」
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