超音速の雷〜ミサイル時代の終焉とその先
第3次世界大戦の終結と第4次産業革命から7年、世界は大きく変わろうとしていた。
護衛艦「みずき」2083年
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『極超々音速弾の接近を補足、数20。迎撃を開始します』
戦術AIが報告を告げる。
両舷の100㎜
AIの報告音声が終わった時には既に迎撃は終了していた。マッハ60近くで護衛艦「みずき」を狙っていた敵弾は全て成層圏で撃破された。
破片に対しては塵単位のものはレーザーCIWSが、数センチ四方のは40㎜CIWSが空中で撃墜する。
俺は
今「みずき」が航行しているのはパナマ海峡南西、アマゾン湾あたりだ。ガイガーカウンターの数値はそこが生物が住める環境ではないことを示していた。
このあたりは東アメリカ連合体の制軌道エリアだ。さっきの攻撃も東アの軌道砲撃システムだろう。
『砲撃地点を特定完了。対軌道砲発射開始』
迎撃から反撃まですべてをこなす戦術AIは自動的に極超々音速弾を発射した軌道衛星を特定、100㎜砲で攻撃を行った。
人間には不可視の速さと領域で砲弾を砲弾で迎撃する苛烈な戦いが数秒の間に繰り広げられる。
『
現代になって護衛艦の戦闘は基本的にAIによって行われる。人間の反射では到底戦闘についていけないからだ。
『横須賀第3護衛艦隊司令部より通信。切り替えます』
VR空間は摸擬会議室に移った。
「
「ええ、順調です。あと2時間で目的地に到着します。東アの残党システムからの攻撃はありましたが、任務に支障はありません」
「そうか、まだ残ってたか...撃破したのか?」
司令官なんだから当然戦闘記録にはアクセスできるだろう。だがこの人はこういう口頭のやり取りを好む人だった。
「はい、軌道砲撃モジュールが7機ありましたが全て撃墜しました。ただ他にも隠ぺいして存在している可能性が高いので、戦闘衛星の増援をできないでしょうか」
「分かった。空自に折り合ってみよう」
「ありがとうございます」
「では、次は任務の完遂後だ」
通信は途切れた。案の定、電波を受け取った潜水艦や水上艦、徘徊無人機が「みずき」の方にめがけて向かってきていた。
もちろん想定の範囲内だ。定期的にこうやっておびきよせて付近の自立戦闘機械を掃討している。
CIWSや100㎜砲が量子コンピューターによって計算された完璧な弾道演算に基づいて射撃を行う。
またクラッキングシステムも敵機の
「みずき」には12門の100㎜コイルガン、40門の40㎜レールガンCIWS、そして無数のレーザーCIWSやジャミング装置がある。VLSといったミサイルや魚雷は現代では一切姿を消していた。
『北西に敵艦隊、数20。100門級が7隻、80門級が6隻、コルベットが複数』
艦長というのは実際はAIのメンテナンスを行うぐらいの役職だ。「みずき」は旧式艦なのでメンテに人間が必要だが海自の殆どの艦は無人艦だ。
それは敵も同じだ。
東アの自立兵器システムは大戦が終わった今でも稼働し続け、見つけたもの全てを攻撃する。
「迎撃用意。ハル・フォーマット
『
船殻が変形し巡航モードから高速航行モードに移行する。ウォータージェットと水中翼によって120ノットを発揮可能だ。
迫りくる無人機は40㎜砲が絶え間なく火を吹き、パタパタと落としてく。
『
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます