異能力混合戦線

いわし

1話:魂喰

魂喰___

それは、人間にとって脅威となる存在。

名前の通り、魂を喰らう事で生きながらえる存在。そして、魂喰に魂を喰われた人間は急速に生気を失い、枯れた木の葉のように干からびて死んでいく。

正確な姿形は伝えられておらず、存在自体が都市伝説だと考えている人間も多い。

だが、魂喰は一般市民に存在を知られぬまま人間の魂を喰らい、誰にも気づかれずに人間社会をむしばんでいった。

警察は徹底的に魂喰の被害者を隠蔽いんぺいした。遺族にはあれこれ理由を付けて事故死だと伝えた。幸い魂喰による被害は少なく、魂喰による被害はいずれも人気の少ない廃墟の近くや森の付近だったため、隠蔽工作も上手くいっていたらしい。

だが、そんな誤魔化しを続けていてもいつかはその存在を知られてしまう。もしそんな事態におちいったら、警察が行った隠蔽工作へのバッシングだけでは済まないだろう。最悪、世界中でデモや自警団が発生する可能性もある。だから、何としてでも隠し通さないといけない事案だった。


だが3xxx年、ついにマスコミが魂喰の存在を嗅ぎ付け、ネットニュースに流してしまった。記事には魂喰の被害者の画像が見せしめるかのように大きく貼られており、隠蔽を行った警察へのバッシングと魂喰の正体を考察するような内容が長々とつづられていた。

これにより世間は混乱を引き起こした。

ネットは荒れに荒れ、警察へのバッシングが後を絶たなかった。世間は国に会見を求めたが、国は沈黙を貫いたのも不安を煽った。


ネットニュースが流れてから17日___

ついに一般人に魂喰の被害者の遺体が発見された。

魂喰の存在を裏付けるのはネットニュースと遺体の画像だけだったため、魂喰の存在を否定している人間も一定数いたが、この一件で世間は魂喰の存在を認めるほかなかった。

その騒動の真っただ中、国はこの事案を隠しきることが不可能だと考えたのか、会見を開き魂喰についての全ての情報を赤裸々に話した。

その会見が行われた後、いつ命のともしびが消えるかもわからない恐怖により集団自殺も発生した。各地でデモが発生し、ゆっくりと日本が終焉しゅうえんへと近づいていった。


ネットニュースが流れてから2年と28日___

魂喰による被害は一向に減らず、増える一方だった。

都心部では一部の公共機関が活動を停止しており、そこら中に飲んだくれやチンピラが溢れていて、まるで日本ではないようだった。

そんな時、政府がとある発表をした。なんと、魂喰の活動を止める方法が発見されたという。どうやら、西洋のとある国で研究を続けた結果、唯一の突破口を発見したとのこと。

その方法は、研究で開発された錠剤「Nsw」を摂取し、人間のDNAに含まれている未知の細胞「Nq」を活性化させることらしい。Nqを活性化させると、所謂魔法のような超常現象を自ら引き起こすことが可能になる。

今確認されている現象は、【陰陽】という、周りに結界を張りすべてを封じ込めることができる現象。詳しい原理はまだ解明されていないが、意識…所謂魂と呼ばれる存在を封じ込めることができると言う。

そしてもう一つが【魔法】という、周りの物体・一部の物質を操ることのできる現象らしい。そして魔法は、陰陽によって作り出された結界の内部では絶大な力を誇っていて魂喰にも対抗できるが、結界外にいる場合は、近くの物体、それに軽いものを引き寄せるほどの力しか使えない。

そんな異常な能力を発現させることのできるこの錠剤には、主に2つの欠点があった。1つ、活性化には個人差があり調整が難しく、少しでも接種量を誤ると暴走状態に入り、最終的には魂喰の被害者のように干からび死んでしまうということ。2つ、この錠剤は全人口の中でもほんの僅かな人間以外には適合せず、適合しないただの一般人が接種をすると、DNAに傷が入ってしまう。傷の深さには個人差があり、時間を置けば完治する程度のものであったり、死もありえるほどの傷だったりと様々である。ということだった。

国は国民にこの錠剤を摂取してもらうために、条件付きだがこの錠剤を病院で無料配布するという意向を示した。


この荒れきった世界に、唯一の希望の光が差し込んだ。だが世間の反応はかんばしくなく、この錠剤の効能を信じている者はほんの極少数であり、大多数の人間はこの話を夢物語だと一蹴した。特にSNSサイトではそれが顕著けんちょに表れており、国やこの錠剤についての批判のコメントが殺到していた。

でも、それは当然なのかもしれない。国が突然「魂喰の活動を停止させる方法を発見した」と発表し、訳の分からない錠剤やら能力やらについてを語りだしても、それを理解し納得しろという方が無理な話である。

だがこの発表がされてから数日後、実際にその錠剤を摂取したという一般人の投稿がSNSに上げられるた。内容としては、その投稿主の近くに流れている川の水を空高く巻き上げ、津波のように波打たたせるといったものだった。

その投稿は瞬く間に世間に広がり、一気にその錠剤の効能は世間に知れ渡ることとなった。

その投稿がSNSにアップされてから数日後、未だに錠剤を信じず攻撃的な言葉を吐く過激派は存在したものの、大多数の人間はその効能に魅了されていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異能力混合戦線 いわし @iwasi_dokusyosuki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る