地下鉄に乗るという、いつもの日常の中。
そこに、じわじわと怪異の気配が忍び寄る。
怪異は最初のうちは、それが怪異かどうかわからないようなことから始まる。
そしてじわじわと、だが確実に忍び寄ってくる。
こちらの著者で拝読した作品ではどれも共通して、
「怪異に近づいていく」あるいは「怪異から近づいてくる」ときの臨場感の描写力が圧倒的です。
わたしが著者の作品のレビューを書くとき、毎回上記のようなことを書いてしまいます。
しかしそれは読む作品が本当にどれも、その“怪異に近づく”描写が恐ろしいまでに現実味を帯びていて、読む私自身にも迫ってくるからに他なりません。
また、漢字の選び方・使い方がとても良いです。
(話がそれますが、著者の「出来心でやった。」という短歌・俳句のシリーズを読むと、その古い言葉の知識の多さ造詣の深さがわかります。)
本作は現代の話ですが、あえて漢字表記をされている言葉があり、例えばアザラシは「海豹」というように表記されています。
本来、現代を舞台にしたような作品では、読みにくくなる恐れすらあるのに、著者の作品ではなぜだか不思議と、それが最も適切であるかのようにとてもしっくりくる。
そういった言葉のひとつひとつへのこだわりがとても良いです。
どの作品を拝読しても、恐ろしくも憧れをいただいてしまう“どこか古めかしい日本の雰囲気”を漂わせており、すっかり魅了されました。
日常と非日常の交錯するような作品がお好きな方にはとてもおすすめです!