第2話 入学

そうして1年が経った。

「アル。いいこと?私はルシアナの敵。ルシアナを超えるの。わかってるわね?」

「もちろんです、お嬢。」

「さあ、いよいよ入学式よ!」

「はい!」


「私のクラスは…ありましたわ!えっとこれは…1組!」

「お嬢のクラス、めっちゃ身分高い人ばっかじゃないですか。大丈夫ですか?ちなみに、俺はお嬢が粗相をしそうで不安です。」

「一言よけいよっ!」

「でたでた、お嬢の「一言よけいよっ!」」

「んな!」

「ハハハ、お嬢おもしろっ!さ、ちゃっちゃと教室行っちゃいましょうよ」

「わかってるわよ!」


「皆さん揃ってますね?私は1組の担任、ソフィアです。では、順番に自己紹介をしてください」

「ああ。俺はグラド•サティーズだ。よろしく頼む」

でましたわね王子!絶対に王子になんかに屈しない!

「フィナ•リズ•ディラードですわ。よろしくお願いね。」

来た〜!フィナ、実物最高すぎない⁉あ、喋り方間違えたわ…っと、私の番ですわね。ここは悪役令嬢っぽく挨拶しないと!

「ルナ•フィー•シルクよ」

よしっ!ちゃんとできたわ!この調子で悪役令嬢ライフを満喫しちゃいましょ!


「やっと自己紹介終わったわ…」

っと、はやく寮に行かないと。この学園は全寮制ですからね。同僚の子は誰かしら…


「101号室は…」

「「あった!え?」」

今、誰かと声が重なった気が…

「は、は、は、はじめまして、私、サナ•ラズ•フィースと申します!えっと、これからよろしくお願いします!」

「私はルナ•フィー•シルクよ。これからよろしくね」

「は、はい!」

ガチャ

「…従者が主人よりはやく部屋に入るってどういうこと?」

「こーゆうことです」

「あなたねえ…私だけの時はまだしも、今日は他のご令嬢もいるのだから…」

「ハイハイ、ワカッテマスヨー」

「ほら!そうやってすぐはぐらかす!」

「すいませんって」

「一切の気持ちがこもってない謝罪をありがとう。あ、サナさん。この失礼なのが私の従者のアルベルトです。」

「「失礼なの」はよけいです」

「そうかしら?」

「そ~です!」

「あ、え、えっと」

「あ、すみません、サナ様。アルベルトと申します」

「あ、サナ•ラズ•フィースです…よろしくお願いします…」

「こちらこそ」

「じゃあ、とりあえずトレーニングでもしますわよ、アル」

「はあ、でたでた、お嬢のとりあえずトレーニング脳」

「失礼ね。普通よ、普通」

「じゃあ、普通のご令嬢のサナ様に聞きましょうよ」

「それもそうね」

「あ、う、えっと…」

「はっきり言って大丈夫ですよ。お嬢のメンタルはミスリルよりも丈夫ですから」

「ほんっとうに失礼な従者ね。お父様に言いつけようかしら」

「聞いてもらえないでしょう」

「この従者のどこが優秀なの?それにお父様も私の実力を認めてくださってもいい頃合いなのに…」

「え、えっと、その…」

「ごめんなさいね、サナさん。私達すぐ話がズレてしまうの。で、普通のご令嬢とはどのようなものなの?」

「えっと、まず、普通の令嬢はトレーニングはしません…読書、刺繍、マナーレッスンなどをして一日を終えます…」

「ですって。お嬢、刺繍したことないですよね?マナーレッスンもしたことないですよね?」

「し、仕方ないでしょう⁉お父様が家庭教師をつけてくださらないんですもの!」

「その言い訳聞き飽きました」

「私は家庭教師なしで王子を超えてみせるわ!」

「おお〜」

「え、ま、待ってください!ルナ様はグラド殿下を超える気なんですか…?」

「ええ。なにか問題があって?というか、王子の名前ってグラドって言うのね」

「え、グラド殿下のこと知らないんですか?王子様ですよ?勉強もできて剣術もできてすごい人で…」

「私だって勉強と剣術ぐらいできるわよ」

「ええ⁉」

「当然でしょう?でも、刺繍をする考えはなかったわね…」

「アル!」

「げ。ハイハイわかってますよ。刺繍の道具でしょう?」

「さっすがアル!正解よ!じゃ、よろしく」

「ハイハイ」

「そういえば、部屋の中には更に部屋があるのよね?」

「は、はい…そうです…」

「じゃあ、1つは私の部屋ってことでいいの?」

「は、はい…」

「じゃ、私は自室に戻るわ」

「はい…ではまた…」


え~と今日は特に用事はもうないわね…夕食も食べましたし、日課は終わらせたわ…そうだわ!明日から授業なのだから、予習しておきましょう!まずは地理を…


「はっ!もうこんな時間⁉速く寝ないと!」


「おはようございます、サナさん」

「おはようございます!」

「おはようございます、お嬢、サナ様」

「おはよう、アル」

「おはようございます、アルさん」

「私は1組ですのでまた後で」

「はいっ!また後で!」

「…?いつのまに仲良くなったんですか、お嬢」

「秘密よっ!」

「ええ〜教えてくださいよ〜」

「だめ」

「お嬢のケチっ!」

「なんとでも言いなさいな」

「えー。それじゃあお嬢、くれぐれも粗相のないように」

「はいはい。わかってるわ」

とりあえず味方をつけたいわね…ファリンズ男爵家令嬢あたりがいいかしら?

「…ルナ•フィー•シルク…目障りね…」

今の声は…シルフィー•ララ•サナー伯爵令嬢ね。…喧嘩売ってるの?

「あらあら、あの有名なルナ様と同じクラスだなんて光栄よ」

「…こちらこそ、有名なシルフィー様に声をかけていただけるだなんて光栄です」

「シルフィー様、そんな方に声をかける必要なんてないんじゃないですか?」

「それもそうね」

「ミレナ、スレイ、そんなことを言ってはだめよ!ルナ様がかわいそうでしょう?」

「そうですね!すみません、ルナ様」

「いえ、お気になさらないでください」

後ろのご令嬢、笑って…呆れたわ。こんなことをしていても時間の無駄ね。

「それでは、私は席に着きますので」

「ええ。またお話しましょうね」

「はい」

絶対に嫌!誰があんなのと話しますか!

「やあ、君がルナかい?」

「はい」

ん?この人どこかで…

「僕はラズ•ラーラ•ビリド。よろしくね」

「え」

「嫌かい?」

「いえ、こちらこそよろしくお願いします」

ラズって攻略対象じゃない!絶対お断りよ!…確かラズの場合の悪役令嬢はシルフィー…ええっと、確か成績は低めで、運動神経はよくて、ええっと、ええっと…あのルートはあんまりクリアしてないのよね…そういえば、ゲームではヒロインに従者はいないはず…

「あ、あの~ルナ•フィー•シルク様ですか…?」

「?ええ、そうですわよ」

今日は私に話しかける人が多くないかしら?

「あ、あの!今、学級長を募集していて…り、立候補してくださいませんか…?」

学級長ねえ…ん?立候補者名簿が白紙?

「…他の立候補者はいないの?」

「あう…その…誰もやりたがらなくって…」

「そう…」

うーん…でも…めんどくさそうなイメージが強いのよね…でも…リーダーの悪役令嬢っていいのでは⁉

「立候補するわ!」

「…!いいんですか⁉」

「ええ、もちろん」

「ありがとうございます…!」

…涙目…おおかた誰かに命令されたってところでしょうね。

「ところであなた、名前は?」

「ひゃい!リリーナ•ハール•フォースって言います…」

フォース…伯爵令嬢⁉この気弱そうなご令嬢が⁉

「失礼致しました、リリーナ様」

「い、いえ!その…できればなんですけど…お、お友達になってくださいませんか?」

「!いいの⁉」

「ル、ルナ様がよろしければですが…」

「でしたら、是非…お、お、お友達になってください!」

「あ、ありがとうございます!そ、その…よろしければ…リリーナと呼び捨てで呼んでくださいませんか…?」

「も、もちろんいいわよ!私のこともルナと呼んで!敬語もなしよ!」

「うん!ルナちゃん!これからよろしくね」

「こちらこそ!」

「一限目を開始しますよ!」

「は〜い!またね、ルナちゃん」

「ええ、また後で、リリーナ」


「やっと授業が終わった…」

「お疲れ様〜食堂一緒に行かない?」

「私の同室の人と一緒でよかったらいいわよ」

「もちろんいいよっ!」


「あ!ルナ様〜!」

「!サナさん〜!こっちよ!」

「あれ?そちらのかたは?」

「新しいお友達なの!リリーナって言うのよ」

「…呼び捨て?」

「?」

「なんでもありません」

「…先程ご紹介にあずかりましたリリーナ•ハール•フォースと申します。ルナちゃんとは仲良くさせていただいています」

「牽制まで…あ、申し遅れました、私はサナ•ラズ•フィースと申します。私もルナ様とは仲良くさせていただいています。」

「なっ!…わ、私のほうが仲良くさせていただいています!」

「んなっ!私のほうが!」

「いえ!私のほうが!」

「???お、お二人共?どうしたの?」







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