恋に落ちた瞬間

なの

些細な日々の恋

中学2年生になり、新しいクラスが発表された。


好きな人も同じクラスになって、私はウキウキ気分!


好きな人は、学年一カッコイイ人で、優しくて、親しみやすい人。


それと、面白い部分もあるかな。


だから、女子から人気がある。


彼とは中学1年生の時から同じクラスで、初めて彼を見た時、かっこよすぎて驚いたぐらい。


この世にこんなにカッコイイ人がいるんだ、って思った。


私は顔で彼を好きになったわけではない。


親しみやすかったから好きになった。


とは言っても、好きになったのは中学1年生の3学期からなんだけど。




中学2年生になってから数日が経った頃、私には気になっていることがあった。


それは、ある男の子がある男子によくからかわれていること。


いじめてるとかじゃない。


その2人は中学1年生の時から同じクラスなようで、その時からそんな感じならしい。


それと、中1のときのクラスで同じだった人は、今のクラスに彼ら2人だけならしくて、余計男の子がからかわれやすくなったようだ。


男の子は元担任から半分冗談で「同じクラスで可哀想だな」と笑って言われていた。


それはなぜか、男子の性格があまり良くないから。


とても悪いわけではないけれど、どちらかと言うと、悪い方。


少し問題児なのだ。


その男子は今の担任とよく喧嘩をしている。


元担任とも喧嘩をしていたみたい。


今でも元担任が授業で来た時、たまに喧嘩をしている。


そんな、皆をヒヤヒヤさせる子。


だから男の子は、同じクラスで可哀想だな、と言われた。


男の子には友達がいるし、嫌われてもいない。


皆は、男子が男の子と同じクラスになれて嬉しくて、かまって欲しいんだよ、みたいなことを言っている。


だけど男の子は、からかわれている時、困った顔をよくしていて、嫌がっているのではないか、と気になってしまう。




でも気がつくと、いつの間にか気になっていたことは消え去っていた。


からかうことに少しずつきてきたのか、そういうことが完全にではないけれど、なくなっていたからだ。


そして、これは個人的なことだけれど、それと共になぜか好きな人への気持ちも何時いつしか薄くなっていた。


嫌なことがあったからとかじゃないけれど、たぶん、元々気持ちが薄かったのだろう。


だから簡単に諦めの方向に向いてしまったんだと思う。


…いや、違う。


諦めたわけじゃない。


なぜか彼への気持ちが、好きっていう気持ちがいつの間にか消え去っていたんだ。


つまり、彼に恋愛感情がかなくなった。


なぜなのかは本当に分からないけれど、気づいたら彼を見たりすることがなくなっていた。




それから数ヶ月が過ぎたある日。


合掌がっしょう!ごちそうさまでした!」


「ごちそうさまでしたー」


昼ご飯を食べ終え、学級委員のかけ声に続いて、中学生のくせにあまり元気のない声量で挨拶を済ませると、クラスメイトは、ガタガタガタッと掃除をするために机を前に移動させ、それぞれ運動場やクラスに向かっていった。


給食当番の私たちは食器を運んだりする準備を始める。


「これ運ぶわ」


「ありがと」


「じゃ、俺これ運ぶ」


「分かった。それじゃあ、私これ運ぶね」


「うん」


私もどれか運ばないと。




食器を給食室に運び終え、教室に戻ってくると、まだ牛乳びんの箱が残っていた。


持って行ってないの一体誰?


すると後ろの扉から、聞き慣れた声がした。


「一緒に運動場行こ!」


友達がボールを持ちながら、そう言った。


「うん!けど、先に行っといて!これ運びに行ってくる」


「分かった。行っとくね」


「うん」


…仕方ない。


運ぶか。


牛乳びんの箱って重いんだよなぁ…。


そう思いながらそれを持ち上げ、運びに行こうとすると、後ろから声をかけられた。


振り返ると、あの男の子がいた。


男の子は、背が低い私よりも少し背が低く、肌は羨ましいくらいに白くて、前髪は目にかかるほどの長さをしている。


ついでに、彼は私と同じ班で、給食当番である。


「…それ、僕が運ぶよ…」


「あっ、ありがとう」


「うん…」


ドキッ。


んん?


そう小さい声で言われた瞬間、私は彼に心を一瞬にして奪われた。


つまり、恋に落ちた。


なぜなのかは分からない。


彼の声が原因だろうか。


優しさが原因だろうか。


人見知りなのか、声は小さく、目は合わなかったけれど、彼のうん…。という声は、なんだろう。


言葉にするのが難しい。


何かフワッとしていて、優しさのある声で、きつけられた。


そして彼には悪いが、恋をしたせいか彼を可愛いと思うようになってしまった。


恋の力ってすごいな。


と、改めて思う。


その男の子と話したことはない。


タイプだったわけじゃない。


興味があったわけでも、視界に入っていたわけでもない。


ただ、大丈夫だろうかと、心配していただけの男の子。


なのに、初めて言葉を交わした今、彼に心がときめいてしまった。




…いつか君に、告白する。


そう私は、人生で初めて何度も思った。


恋って不思議だ。


突然消えたり、突然現れたり。


この後、私たちはどうなったのか。


それは秘密。


だけど。


また恋の日常は、続いてく。

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恋に落ちた瞬間 なの @nobara_nagi

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