い えない…

第16話

翌朝インターホンを押して、いつも通り私を迎えに来てくれるゆきくん。


「おはよう、蘭ちゃん」


「……おはよう」



なんだかゆきくんがいつもと違く見える。



「どうしたの?元気ないね」


「え?!そんなこと、ないよ!」



ああゆうビデオは法律で18歳未満はダメって。ってゆうことはゆきくんは犯罪者なんじゃないの……?


バレたら捕まる……。



「蘭ちゃん?」


「……ゆきくん」



誰にも相談できない……。



「あの……、その……」



ってゆうかゆきくんが、ああゆうのを見てることが嫌だ。



「どうしたの?何かあったの?」



私がゆきくんの罪を知っていることも知らず、ゆきくんはいつも通り私に優しい。


結局何も言えないまま、電車に乗り学校に着く。



「じゃあね、蘭ちゃん。気をつけてね」



「ゆきくんも……気をつけてね」



色々、気をつけた方がいい。だってバレたら捕まるし……。



「……おれ?え、何に気をつけるの?」



白ばっくれるゆきくん。分かってるくせに……。



「けーさつ、とかさ」



それだけ言って教室に向かった。



一人で歩いてると後ろから美奈ちゃんに肩を叩かれる。


「おはよ、蘭。


昨日は眞冬とのデート楽しかった?」


「……美奈ちゃん」



美奈ちゃんを見たらすごく、ホッとした。

だけど何も言えない。


ああゆうビデオの存在は何となく知ってる。

アダルトビデオってやつ。略して、AV。



レンタルビデオ屋さんでR-18って書いてあるカーテンのコーナーにある。



『フクへ』って書いてあったから、きっと誰かがゆきくんに無理矢理渡したんだ。


薬の密売的な。



……だけど、ゆきくんのデッキの中に入ってたから、やっぱりゆきくんはあれを見てるんだよね?



「ちょっと、蘭?どうしたの?」



肩を揺すられハッとする。



「……え?」


「何か今日ちょっと変じゃない?」



美奈ちゃんに言えば楽になる気がする。


美奈ちゃんは何でも知ってるから、もしかしたらゆきくんのあのビデオも詳しく知ってるかも。


……だけど、言えない。犯罪だもん。



「みなちゃん……」



私は美奈ちゃんをギュッて抱きしめた。



「ちょ、らん?暑い!」


「……どうしよう」



すると都ちゃんが後ろから不思議そうに声をかけた。



「二人とも、抱き合ってどうしたの?」



都ちゃんにも思わず抱き着いた。



「みやこちゃーん……」



もう、胸が苦しい……。

あのDVDは一体、何なんだろう?



いや、正体も知ってるし、ゆきくんのってこともちゃんと理解してるけど、ゆきくんは何のためにあんなのを沢山持ってるんだろう……?

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