第12話
帰り道をゆきくんと歩いてると、なぜかついて来る日高。
「……何なの?」
私が不機嫌に聞くと日高は平然とした様子で「俺も家、コッチだし」と、答えてくる。
……スーパーうざいっ!
私がため息をつくと日高が後ろに引っ張られる。
「懲りないな、本当」
低い声が聞こえて、だれかと思えば大澤だった。
大澤は面倒くさそうに欠伸しながら言った。
「詩織もいないし。一緒に帰る?」
協力的な大澤は珍しい。
「いや、俺は……」
大澤が日高の腕を掴む。
「今ならもれなく伍樹もついてくるけど」
大澤の後ろから「おーさわせんぱーい!!」と、中野が走ってきた。
ゆきくんは私の手を掴み「じゃ、大澤に甘えようか」と、笑顔で言ってきてくれる。
そのとき。
「よねくらっ!」
何を思ったか知らないが日高が大声で私を呼ぶ。
「シンデレラ、頑張ろうなっ!」
大澤が眉間に皺を寄せ「シンデレラ?」と、聞き返す。
「俺達のクラス、演劇でシンデレラをやることになったんです。
で、俺が王子で米倉はシンデレラ」
ゆきくんは呆れた様にはぁ、とため息。
むしろ大澤の方がその話にキレてる。
「何それ。フク許せんの?」
「たかが劇だろ。それも、文化祭の」
ゆきくんは私の手を握ったまま歩きはじめた。
「悔しくないですか?俺が、王子」
「ごめんね。悔しくはないかな」
日高の問い掛けにもゆきくんはサラッと答える。
そして笑顔で言った。
「悔しくはないけど、いい加減空気読もうか」
「じゃあ、空気を読んだ上で言わせてもらいます」
途中から遭遇した中野はこの状況に全くついて来れてない。
「俺、その劇で米倉とキスシーンあるんで」
そんなの初耳だった。
「なにそれ?!」
ゆきくんより先に私が聞いてしまう。
「そんなの聞いてない!」
「脚本係の奴が俺に言ってきた」
そして日高はゆきくんに向き直る。
「もちろん、フリですけど」
「そりゃ、そうだろうね」
「でもそんなの俺の勝手じゃないっすか」
大澤は更に訝しげに日高を見る。
「……つまり君は蘭ちゃんとキスでもしようとしてるの?」
ゆきくんの質問に「ってゆうか」と、私を指差す。
「俺、米倉が好きです」
ゆきくんが口を開く前に私は大きな声で叫んだ。
「有り得ないっ!
私あんたなんか、だいっきらいだもん!」
ゆきくんの腕をギュッて掴む。
「私が好きなのはゆきくんだもんっ!」
なのに日高は平然としてる。
「お前、俺のこと何も知らねーのに何でそう言い切れんの?」
中野が日高の腕を引くが日高は中野の手を払う。
「俺のこと知らないんだから、まだ何も分かんねーじゃん」
そしてなぜかゆきくんを見る。
「俺、マジっすから」
だからあんたがマジでも私がそれを許さないからっ!
ゆきくんは静かに「そう」と、軽く答えた。
「じゃ、蘭ちゃん。早く帰ろうか」
そして私の手を少しつよく引く。
「あ、日高くん。一言言わせて」
ゆきくんは笑顔で一回日高を振り返る。
「俺も蘭ちゃんのことマジだから」
……誰か教えてください。
これは一体、どうゆうことですか?
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