が ーん…。

第11話

放課後。防音室。



私は相当、不機嫌です。



「米倉も来たんだなっ!!」



なぜなら。



「俺達も今日、見学することにしたんだ!」



日高が隣にいるから。



……正確には日高のバンドの奴ら全員、揃ってる。



笹内と、あとなんかよく知らない男子三人。



ドラムが中野でベースが島田でボーカルが清田だってさ。



……よく知らないけど頭、悪そう。



こんな奴らと何で、ゆきくん達ギャラスタが共演しなきゃいけないの?



「悪いな、蘭。

こいつらがどうしてもってうるさくって」



ギャラスタのボーカルの流星先輩に言われたらもう、大丈夫ですっていわなくちゃいけないし。


練習が始まって私は大人しーく練習を見る。



一番やったらいけないのは邪魔することです。



それなのに。




「米倉、お前もっとこっち来れば?」


「米倉、お前今日何時くらいに帰るの?」


「米倉は今週のギャラスタのライブ来る?」



米倉、米倉ってうーるさーいっ!

見学しに来たんじゃないのかよっ?!



ひたすらシカトしていたら、どんどん私に近付いて来る。



ウザい、ウザい、ウザーい!



笹内は真面目にゆきくんの演奏聞いてんじゃん!!



ちょっとは見習え!



「なぁ、米倉ー」



日高が私に触ろうとしてきたとき、ゆきくんが日高の手をパシッて掴んだ。



「日高くん。蘭ちゃんに触らない」



防音室がシーンってなって、カクちゃんが笑った。



「たかくん、とりあえずもうちょっと左にズレよう!」


日高を私から少し離す。



「うん、そうゆうこと」



ゆきくんもすぐに日高から手を離し、いつも通りに戻る。



「ごめん。何か、空気悪くした」



ゆきくんは少し笑って、またギターの位置に戻る。



「すみません、先輩。続けましょう」



流星先輩は一息ついて「いや、休憩にしよう」って言った。



「二時間ぶっ通しは体に良くねーよな。


フミも飽きてるしな」



流星先輩の指差す方を見ると清田がコクコクと眠そうにしていた。


スズちゃんが私の隣に来て、ちょこんと座った。


「蘭ちゃん、久しぶりだね」


「うん。久しぶり」



私は何だか少し気まずい気持ちになった。



「ゆきくん……怒ってる?」


「怒ってないよ。どーして?」



私はうーん、と考える。



「さっき、ちょっぴり怖くなかった?」



スズちゃんは頭を傾け「怖かった?」と、聞き返す。



「かっこよかったの間違いじゃなくて?」



スズちゃんは笑って私にクッキーを渡す。


「これ。詩織がさっき、くれたの。


蘭ちゃんにもあげる」



クッキーはかじると中から苺ジャムが出てきた。



「ゆきくんは常にかっこいい」


「確かにフクちゃんはかっこいいよねぇ」



大澤と笑顔で話すゆきくんが目に入る。



「でもさっきのは特別かっこよかったよ」



スズちゃんもゆきくんのことを見る。


私がゆきくんのことジーッて見てたら視界に日高が入った。



「……さいあく」



私が呟くとスズちゃんが笑う。



「たかくんのこと、そんなに嫌い?」


「嫌いっ!」



そしたら流星先輩が「練習再開」と、立ち上がった。



「スズ、早く来い」



スズちゃんも慌てて立ち上がる。



「それが、不安なのかなぁ」



立ち上がりながら独り言みたいに呟いた。



「嫌いなことが不安なのかなぁ」



スズちゃんは私を見ずにキーボードの所へ行ってしまった。

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