第10話

私達がそんな話をしながら廊下を歩いていたら、なんと前方にゆきくんが!



「ゆーきくーん!」



大きく手を振ると笑顔で振り返してくれた。



「日高にあのスマイルを越えることができますか?」



都ちゃんと美奈ちゃんは首を大きく横に振る。



「日高くんってやっぱり少し暴走癖がある、ってゆうか…。すごく子供だよね」


「年下と付き合ってる都がそれ言うか」



都ちゃんと美奈ちゃんの会話に耳を傾けず、私はゆきくんに飛び付いた。



「蘭ちゃん!ここ、学校だから!」


「聞いてよ、ゆきくーん……」



ゆきくんの隣にいたカクちゃんはニコニコしながら私を見る。


ゆきくんは私の友達に「こんにちは」と、キラキラ挨拶。


カクちゃんも「こんにちはー!」と、明るく挨拶。



カクちゃんは本当に優しくて明るくて、とっても良い人だよ。



「結局私のクラス、シンデレラになったー……」



私の言葉をゆきくんは笑顔で聞いてくれる。


もう、ゆきくんの笑顔を見たら抱き着かずにはいられない。だけど、学校だしね……。


ゆきくんいわく先輩の目とかもあるし。



私はゆきくんから離れ静かに呟く。



「しかも、シンデレラになった」



「え!ほんとう?!

蘭ちゃん、すごいじゃん!」



私は小さく下を向き首を横に振る。



「王子、日高になった」



少しだけ空気が止まり、カクちゃんも気まずそうにする。


美奈ちゃんが何か言いかけたその時。



「そっかぁ、日高くんかぁ」



ゆきくんは笑顔のまま私の頭に手を置いた。



「じゃあ、尚更日高くんのことは警戒しなきゃね」



そして、怒ることも悲しむこともなく。



「シンデレラ、頑張って」



そしてカクちゃんと二人で私に手を振る。



「あ、そうだ。


今日からは俺達、ライブの準備でギャラスタだけで練習だから、良かったら蘭ちゃん遊びに来てね」



去り行くゆきくんの後ろ姿を最後まで見届けた。


二人が去ったのを見届けてから美奈ちゃんが息をつく。



「見ましたか、眞冬さん」


「見ましたよー」


「ヤキモチ妬いてることを隠すことなく、かと言って蘭に当たることなく、素晴らしくポイントを上げてくれましたね」


「さすが接触加算人物代表」



都ちゃんもゆきくんの行った方を見つめ「大人な対応だね」と、しみじみ呟く。



「あれを生まれてからズーット見てたら、そりゃあ高一なんて、みんなガキだよね」



美奈ちゃんもしみじみと腕を組みながら言う。



「日高じゃムリだわぁ」



ゆきくんは私の友達からも、とても好評価なのです。



「しかもこんな私達にも笑顔で挨拶!」


「笑顔を出し惜しみしないあのサービス精神の豊かさ。


拍手ですよ」



美奈ちゃんと眞冬ちゃんはとりあえず、置いといて、今日はギャラスタの練習見に行っても良いのか!



久しぶりにスズちゃんにも会えるし、上手くいけば大澤から調理部のお菓子を貰えるかもしれない!



「楽しみー。

ゆきくんに早く会いたい!」


「さっき会ったばっかりじゃん」



美奈ちゃんの声なんて左から右へ聞き流す!



「ゆきくんのギター聞くの久しぶり!」


「もうすぐライブなんでしょ?」



眞冬ちゃんの声も後ろから前へ聞き流す!



「一緒に家に帰れる!」


「毎日のように、お部屋にお邪魔してるよね……?」


都ちゃんの声も右から左へ聞き流す!



「早く、放課後になれー!」



私がそう叫んだらチャイムが鳴ってしまって慌てて化学実験室に走った。

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