第6話

「そんなこと言わずに頑張りなよ」



ゆきくんの家に寄って今日あったことを話すと、ゆきくんは笑顔で私にそう言ってくれた。



あぁ、癒される……。



「でもね、私出たくないって言ったんだよ!

なのにさぁー……。ひどいよっ」



さっきも言ったけれど、ゆきくんのお家は私の家のすぐ隣です。



「ゆきくんは出ない?」


「でないよー。

あ、でも秀は今年も出るみたいだね」



秀とゆきくんは親友。



あんな奴と親友ってとこも、なんて心が広いんだ、とつくづく尊敬。



「兄妹で出場なんて素敵だよ」


「あんな奴の妹って皆に思われたくない!」



頭を動かしたら「あー、動いちゃダメ」って優しく言われた。



ただいまゆきくんに髪を染めてもらってます。



ゆきくんはすごく明るい綺麗な色に髪を染めてる。


高校に入って、私も同じ色に染めるって言ったら「俺のは明る過ぎて目つけられるから」って、私に合う色を選んでくれたの!



「黒髪でも十分似合うのに」


「だって、髪黒いと幼く見えちゃうもん」



ゆきくんに少しでもふさわしい女になるにはもっと大人な女を目指す必要がある!



「あ、あとね、ゆきくん!

私達のクラスは演劇やることになったよ!」



「楽しそうだね」ってまた、優しく笑ってくれた。



「何の劇やるの?」


「まだハッキリは決まってないけど……。


シンデレラが今のところ一番優位」



ゆきくんは道具を洗いながら「そっかー」と、私を見る。



そして私の髪から手を離す。


「俺、劇とかやったことないからな。

カクは一年の時にやってたけど」



カクちゃんはギャラスタのベーシスト。


ゆきくんと同じクラスで美奈ちゃんのお姉ちゃんの結奈ちゃんの彼氏。



「確か……ロミジュリ?」


「えっ?そうなの?!」


「うん。

演劇部門優秀賞だったよ。

あいつは確か照明係だったけど」



確かに言われてみれば、ゆきくんが一年の頃そんな劇もやってたかも……?


あんまり覚えてないけど。



「演劇って一番大変だよね。衣装も、台本もあるし。


それで部活頑張ってる奴らは夏休みに練習参加できないから夏休み前がすごい忙しいんだよね」


「ゆきくんのクラスは?」



私の服が濡れない様に上手に髪の薬を流す。

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