EP42:新たな希望
スターリンがアレクサンダー・フレミングをスカウトし、ペニシリン研究を支援するようになってからというもの....フレミングのペニシリン研究のために立ち上げられた研究所では史実よりも早くペニシリンの量産に成功。
そして、実証実験にてペニシリンの効果が認められた後....フレミング率いる研究チームはその技術を応用してサルファ剤、テトラサイクリンなどの薬品も生み出されたことによって、ソビエト共和国連邦は医療面でも一足先に進んでいた。
「凄いな....この薬があれば、日本で病に苦しむ人達を救える!!」
「あぁ!!そうだな!!」
そのためか、ペニシリンの量産方法を学ぼうと同盟国である日本から多くの学者達がやって来ていた。
その中には後に近代日本医学の父と呼ばれる男、北里柴三郎もおり
「まさか、カビの中から多くの人の命を救う薬が生まれるとは....盲点でしたな」
「えぇ、私も最初は驚きましたよ」
フレミングと共にペニシリンについての話をしていた。
「スターリン閣下は私の研究を与太話ではなく真実であると理解し、私の研究は多くの人々を救うものだとハッキリ言ってくれた。これだけでも私は嬉しいのです」
そう言いながら、同じ志を持った科学者達が研究に勤しむ研究所内を見つめるフレミング。
そんなフレミングを見た見た柴三郎は、かつて研究所のことで政府や大学と揉めた過去があるからなのか、フレミングの才能を見抜いた上でペニシリンの研究に専念させるためにわざわざ研究所まで建てたスターリンに対し、ここまで医学に対して理解力がある国のトップがいるのか....と驚いていた。
「となると....イギリスはあなたという大きな魚を逃したことになりますな」
柴三郎がそう言うとフレミングはポカーンとした顔になったが....すぐにその言葉の意味を理解するとこう言った。
「私はしがない医者です。そんなに大物ではありませんよ」
フレミングはそう言うと柴三郎はこれぞ本物の大きな魚だなと思った後、日本からやって来た科学者達がソビエト人の研究者と交流する様子を見ながら、とある物を見ながらフレミングに向けてこんなことを言った。
「ところで....これが噂の新しい顕微鏡ですか」
柴三郎の視線の先にあったのは大きな顕微鏡....未来では電子顕微鏡と呼ばれるようになる道具で、一言で言えば細菌よりも小さな生物であるウイルスを見ることが出来る物であった。
何故、これがソ連の研究所にあるのかというと....その答えは至って簡単で、国内での感染症対策のためにとスターリンが極秘裏にベルリン工科大学に開発を依頼し、史実より二年早く完成したモノを研究道具としてフレミング達が利用出来るようにしたのだ。
「えぇ、これのおかげでとても研究が捗っていますよ」
「値段的にもお高いのでしょうが....是非とも我が国にも欲しいところですな」
柴三郎がそう言うと、その価値を理解する仲間ができて嬉しかったのか....ニコニコ笑うフレミング。
その後、意気投合した二人はそのままお茶を楽しんだ後、スターリンに電子顕微鏡を日本にも送ってもらえないか?と頼み込んだところ、北里柴三郎の頼みは断れない!!となったスターリンが何とかしようとしていた時、彼が自分達の発明品の価値を理解してくれたことに感動した電子顕微鏡の開発者こと、マックス・クノールとエルンスト・ルスカが自分達を売り込んだことにによって電子顕微鏡の量産も可能となり、そのついでに特許も取得したことにより、ソ連と日本の医療は格段に進歩していった。
なお、この影響なのかは分からないが....北里柴三郎は史実よりも長生きしたのはまた別の話である。
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