第23話
実を言えば、人生で一度くらい「可愛い」と褒められてみたい、という願望を持っていたのだが、こんなに反応に困るなら男に間違われていた方がマシかもしれない。
「年齢とか関係なく、私のこと女に見れる人いないですよ。男の人は、華奢で可愛い洋服が似合うような子がいいに決まってます」
「んー?そんなことないと思うけどな」
「私なんて女の子と付き合う方がまだ可能性高いくらい」
自虐でお茶を濁すが、大人な瀬古さんにはそれすらもお見通しで。
「わざと自分を下げると損するよ?」
「……っ、」
顔を覗き込まれ、響以外の異性と合わせたことのない距離で視線が交わる。
妙な説得力と色気のある大人の微笑み。ドキリと心臓が跳ね、目を泳がすとクスッとまた笑われた。
多分、このくらいで動揺するなんてガキだなって思われたんだと思う。
「素直だなぁ。素直すぎて悪い男に騙されないか心配になる」
「……」
決して馬鹿にした空気感ではない。
……自意識過剰かもしれないけれど、彼の頭の中にあるのは“可愛い”なのではないかと感じてしまう。
もちろん恋愛的な要素を含んだものではなく、子どもとか犬猫に対するソレと同じようなものだ。
悔しい、恥ずかしい。でも、無理にしっかりしたふりをしなくても、安心して弱者に回れるこの環境は新鮮で、案外気が楽だったりもする。
そうか、私って年上の人と話すの好きだったんだ……なんて、インターンに来て初めて知った。
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