第7話



 好きな人から告白をされた。


 気持ちのこもった愛の告白。場所は放課後の教室で。

 言葉にしてしまったらもう戻らない。関係が変わってしまうかもしれない。うまくいく保証なんてどこにもない。

 それでも気持ちを打ち明けてくれた。

 真剣に恋をして、悩んで、苦しんで、伝えたいけど伝えられなくて。そうして、やっと言葉にできた大切な愛の告白。



 




 「ずっと謝りたかった」


 「……昇降口であった日のこと覚える? あの日、靴箱に手紙を入れたの僕なんだ」


 「玲央が他の女子と仲良くなる前に伝えたかった。でも結局、このクラスの人じゃないって自分から言ったけどね」


 「それを踏まえた上で言うよ。僕は玲央のことが好きだ」


 「でも普通じゃないことは分かってる。だからあの日、溝口さんに会った日からずっと怖かった。この人が周りにバラしたらどうなるんだろって」


 「秘密をバラすなんてこと溝口さんはしないと分かっていた。けど不安は拭えなくて。溝口さんがいい人って分かれば分かるほど、自分が醜くて仕方なかった」


 「カラオケ行った時に確信した。多分溝口さんは手紙のことを知らない。だからちゃんと謝って本当のことを全部伝えたくて。それが今まで騙してきた僕が出来る、唯一のことだと思ったから」



 静まり返った教室で未緒くんがネタバラシをする。

 今まで誰にも言えなかった真実。辿々たどたどしさが消えた彼の話に矛盾はない。

 むしろ、これまでの未緒くんの言動に納得がいく。


 昇降口での会話も、教室で庇ってくれた事も、2人でドリンクバーで話した事も。

 未緒くんとの思い出。楽しくて愛おしかった思い出が、君にとっては疑われていただけなんて。

 でも、それより……


 お願いだから「全部、嘘だよ」って言って欲しい。面白くない冗談だとしても、今なら笑って許してあげるから。


 「……本当にごめん」


 顔を上げられないまま話を聞く。でもいつまで経っても嘘だよとは言ってくれない。むしろ謝ってきた。


 別に謝って欲しいわけじゃない。

 謝って欲しいわけじゃなくて……



 私より明るくて、可愛くて、優しくて、楽しい女の子。好きになったのが、そんな人だったら簡単だった。

 ただの失恋って諦められるから。


 でも、そうじゃない。

 そうじゃないから、まだ可能性があるかもと期待してしまう。


 未緒くん想いが届くことはないんじゃないか。振られた後で女の子を好きになるんじゃないか。その女の子は私なんじゃないか。


 君のことが好きで、君には幸せになって欲しい。そう思ってたのに、いつのまにか君の不幸を願っている。君を否定したくなる。


 そんな私が嫌だった。



 未緒くんの想いは本物。だからこんなにくるしそうなんだ。


 水無月くんの友達以上にはなれないって未緒くんは言った。きっと未緒くんとっての私も同じなのかな。


 いいや。聞かなくても分かる。

 私が君のことを好きなのと同じくらい、君も彼のことが好き。

 ならば、私の感情は邪魔なんだろう。


 怒ったら君は困る。

 泣いても君は困る。

 黙っていても君は困る。

 「好き」って伝えても困らせる。


 だったら――

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