甘い香り

第11話

セレイアはハンカチを濡らして、アレクサンドリアの鼻血をぬぐっていた。


「すまない、セレイア。興奮してしまって」

「大丈夫ですか?」


セレイアは眉を下げながら笑う。


「ああ、笑っても可愛いのだな……」

「恥ずかしいです」

「今まで気が付かず、すまなかった」

「いえ、殿下は悪くありません」


見つめ合う二人。


『番だから優遇されるなんて、そんなの許せないわ!』


いきなり女性の声がした。

曇った鏡のようなものが浮かんでいる。


ぼんやり誰かが映っているが判別はできない。


『うふふ、今度は体が臭くなる魔法をかけてあげる!』


相変わらず地味に嫌な魔法だ。


アレクサンドリアがセレイアを庇う。


「殿下!!」


アレクサンドリアが中指に嵌めた指輪を鏡にかざす。


『なにっ?! ちょっ、う゛っ!』

曇った鏡が消える。


「一体どうしたのでしょう?」

「ああ、この指輪で魔法を跳ね返したんだ」

聞けば、指輪は魔法を倍にして跳ね返すらしい。


「今頃、アイツの体臭は……うん、やめようこの話」

アレクサンドリアは明らかにげんなりした様子だ。すかさずセレイアは話を変えようとする。


「そんな便利なものがあるのですね?」

「王族は命を狙われることもあるからね。そうだ、セレイアのも作ってもらおう」

「良いのですか?」


「良いに決まっているよ。未来のお妃様だからね」


アレクサンドリアは跪いた。セレイアの黒髪に口付け、笑う。

セレイアもほほ笑み、頷いた。


「殿下、大大大好きです!」


今まで言えなかった分も含めて気持ちを込めた。


そしてセレイアは甘い香りに包まれた。

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竜の番の婚約騒動。制約魔法で好意が示せません 蟹井のん @kanii_non

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