第30話 ★平松流正当後継者【平松美々子】その1
SIDE:
※主人公以外の三人称視点となります。
「信じられませんね。正直体重が1トン以上あるとしか思えません。これはそういう足跡ですよ」
漁港から少し離れた場所で足形を調べていた鑑識から話を聞く。
コンクリートの地面に深々と残ったこの足形だが、昨日までは無かったものらしい。
気になって調べさせていたら、案の上、車の上に残った犯人のモノと一致した。
「1トン?1000キロってことか?そんなビックリ人間、いて堪るか。某SF映画の人型殺人マシーンでも500キロくらいだぞ?」
「相手は一人だったとか?しかも銃で撃ったのに効いた素振りすら見せなかったらしいじゃないですか。案外未来から来た人型ロボットって可能性もありますよ?」
現在ブラックローズは警察病院に収監されているが、取り調べは本庁の人間が行っている。
私達千葉県警は現場で証拠探しの仕事をありがたく承ったという訳だ。
まあ私は今日も非番なんだけどな。
「私一人でも10人は相手に出来るぞ。それに姿を見せたのは一人だったが、狙撃されたと言っている者達もいるらしい。他にも足跡があるかもしれん、狙撃できそうな場所からも足形を取ってくれ」
私はこう見えても、平松流十文字槍術という戦国の世から続く武術を伝承している家の娘だ。
そしてすでに父は一線を退いているので、一人娘である私が正当後継者と言うことになる。
まあ私は結婚するつもりはないから、次の後継者はいとこ辺りになりそうだが……。
兎に角私は、所謂槍の達人というヤツである。
そんじょそこらの冒険者には負けたりはしない
まあダンジョンの外で10人は言い過ぎかもしれないが……。
とは言ってもダンジョンの中なら30人が100人でも問題なく倒して退ける冒険者も知っている。
ダンジョンの中なら、だが……。
今回問題なのは捕まえたブラックローズの証言と実際に起こったことが一致しないことだ。
とは言ってもブラックローズの連中は皆重傷。
一律に両足の骨を砕かれて発見されたのが今日の午前2時過ぎだ。
時刻はまだ昼前、治療もあるだろうし、事情聴取もままならない状況なので仕方がない。
「警部。鑑識はなんと?」
漁港に戻って佐々木と情報を共有する。
「未来から来た殺人マシーンの足跡だとさ」
「は?」
意味不明な足跡を解析するのは私の仕事ではないので忘れることにしよう。
それよりも今わかっている情報から犯人の絞り込みをするのだ。
「そっちは?」
「はあ?拳銃に残っていた弾数から想定した銃弾が半分も出てませんね。派手にドンパチしていた音が近隣住民の証言からも聞かれていますし、残りは海だと思われます。本部はダイバーを出して探せと言ってきていますが、でないでしょうね」
ブラックローズの奴等は銃まで持っていたらしい。
正直ここに到着したのが終わってからでよかったと言わざるを得ない。
ウチと衝突していたら何人の死者が出ていたか……。
「血痕は?」
「それもほとんどないですね。まだ結果待ちですが、銃で撃たれたような量の血痕は見つかっていません」
銃撃戦があったはずなのに、血はほとんど出てないと言うのも変な話である。
「奴等の証言も回ってきてるか?」
「はい。やはり姿を見たのは一人だけのようです。それと……」
「それと?」
「相手は忍者だったと」
忍者……。
まとめると犯人は未来から来た忍者ロボットと言うことになるのか?
今や上位の冒険者のほぼ全員のジョブが【忍者】な時代だ。
もちろん私は違うが……。
だが忍者と言えば最近その噂になっている男がいたな……。
昨日も予想通りの巻き込まれ具合で、何人も潜伏してたブラックローズのメンバーを確保することが出来た。
まさかとは思うが……。
兎に角、電話をして見る。
︙
︙
「これは……。ミスター服部半蔵ですか?」
佐々木がモニターを覗き込んでくる。
斎藤春道がコンビニで買い物をする様子が映し出されていて、画面の端には02:15の表記。
「……だな。忍者と聞いてコイツかと思ったが、違ったようだ」
銃撃戦の音がしたのは2時を過ぎた頃。
房総半島の反対側、太平洋側から東京に程近いこの千葉支部付近のコンビニまでは車でどんなに飛ばしても1時間以上は掛かる。
15分で戻って来れる距離ではない。
当てが外れたと思いつつ、そもそもアイツにそんなことが出来るとも思えないと考える自分もいる。
なぜ自分もあの男を疑ったのかわからないのである。
刑事の勘と言うヤツだろうか?
まあそれも外れた訳であるが……。
「態々映像をもらって来たんですか?彼にはできませんよ。第一、前も洗った時も綺麗なものだったじゃないですか……。しかもこの後も話を聞くんですよね?」
「うるさい!お前はさっさと例の身元不明をダンジョンに連れて行って名前を確認してこい!」
倒れていたブラックローズの中に一人だけ身元不明の男がいた。
顔立ちからして明らかに日本人ではないので、新井が【
だがダンジョンに連れて行って【鑑定】すれば、名前の言語表記で外国籍なのは一発でわかるし、それが新井の見た名前と一致するならダンジョンへの無許可の侵入でぶち込んで置けるのだ。
意気込んで千葉に乗り込んできた本庁の奴等だが、結局倒れている奴等を捕まえただけで、仕事らしい仕事は何もしていない。
しかも敷いていた警戒線を抜けられて逃げられそうになったところを別の誰かがお情けで身柄を譲ってくれたような形になっているのだ。
連中は躍起になってその忍者とやらを探している。
「忍者ロボットは今頃未来に帰ってますかね?」
佐々木がボヤく……。
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