ダンジョンボス部屋前の喫茶店

満足市民

第1話 奇妙な張り紙

 仕事帰りの道中、妙な張り紙を発見した。

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 求人 

  仕事内容 喫茶店業務全般

    条件 喫茶店業務経験がある方

       冒険者経験がない方

                   

  日給 金貨5枚

   面接場所 東通り4丁目23番地 

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 奇妙と言えるほど怪しい内容だった。


 酒場の求人より少ない記載の内容に、ばかみたいに高い日給。金貨5枚なんて一般人が3か月必死に働いて稼げるかどうかという金額だ。さらに、記名されている住所は古い住居があるだけの場所で、私の知るところではカフェなんて存在していなかった。


 詐欺だろうか? いや、詐欺ならもうちょっと体裁を保つだろう。むしろ詐欺広告の方が、一見安全そうに見せるものだ。子供の悪戯だろうかとも考えたが、少し達筆ながら美しい字体と、妙に上質な紙質がその線を否定している気がした。

 

 じゃあ、この張り出しは一体どんな人物が張ったのだろうか。


 それまで考えていことが、客入りの少ない店や借金などという鬱屈とした現実と、冒険者になってダンジョン探索で一山あてようか、娼館にでも行って体を売ろうか、などという実行する気もない妄想ばかりだったため。その奇妙さは妙に惹かれるものがあった。


 偶然にも募集条件は満たしている。小さい店ではあるが実際に店をやっているし、冒険者をしたことなんてない。


「…………」


 いつの間にか、自分が行く算段を付けているという異常性に気が付いた。 


 確かに金は無いのは事実だが、こんなものに行くほど馬鹿ではない。悪戯ならまだしも何かやばいことに巻き込まれる危険性すらある。これに行くくらいなら今から娼館のドアを叩く方がまだ幾分かましだろう。


 そう思える自分も確かにいるものの、それを上回る強い好奇心によって、とりあえず行ってみようという馬鹿みたいな選択をとってしまった。

 



   

 

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