女騎士のエルフさんに助けられたら、見返りとして同棲を要求された件について

ぷらぷら

第1話 女騎士のエルフさん

「はぁ……流石に疲れたな……」


 俺、雨宮夕は大きな欠伸をしながらすっかり暗くなった帰り道を一人歩く。


 学校の図書室は静かでよく集中できるだ、勉強をしていたらついついこんな時間になってしまった。


 流石に少しやり過ぎたな……今度はもう少し早く切り上げるようにしよう。


 そんなことを思いつつしばらく帰り道を進んでいたその時だった突如黒いスーツをきた怪しい男達が俺の行くてを封じるように立ち塞がった。


 その男達からは常人ではないような圧倒的な威圧感を感じた。


「……雨宮夕……だな?」


 一人の男が酷く冷たい声でそう問う。


 な、なんでこの男、俺の名前を知ってるんだ……


 そう疑問に思うも俺は動揺を表情に出さずに冷静に答える。


「……そうですけど……俺になんの用ですか?」


「君を連れてくるようにとある人物から依頼されてね……我々と一緒に来てもらおう」


 なるほど……そういうことか……


 俺はこの状況の意味、依頼した人物の全てを理解した。こんな事をする人物など俺の中では一人しか思い浮かばない。


 まさかこんなことまでしてくるなんて思いもしなかったけど。


「……拒否権はありますか?」


「ない。抵抗するようであれば、死なない範囲で痛めつけてもいいと言われている」


「そうですか……なら——」


 選択肢は一つに決まっている。


 俺は決意を固めると男達の不意を突き、一気に駆け出した。


 だが男達も俺の行動を最初から読んでいたかのように動揺することなく俺を追いかけてくる。しかもものすごく完璧なフォームだ。


 黒服の男に追いかけられるって、まるでテレビの企画のような状況だな。


 そんなことを冗談混じりに思いながらも俺は必死に走り続ける。


 よし、ここを曲がればすぐ家に——


 だが無情にも角を曲がった先には先程の男達と同じ黒服を着た男達が待ち構えていた。


 そりゃあ……待ち伏せするか……


 既にそこにはご丁寧に車まで手配してあり俺を追っているように見せてここに追い込んでいたというわけだ。


 来た道を戻ることも考えてみたが既に俺を追ってきたいた男達も追いついていて挟み撃ちの状況になっていた。


 詰み……か……


 俺はもうどうにもならない状況に気づきその場にへたれこむ。


「抵抗は終わりか?」


「……」


「ならば、連れて行く」


 恐らくあの車の中になったが最後、俺はもう二度と普通の日常を遅れる日はこないだろう。そんな危機的状況だというのに俺の心は酷く冷静だった。


 また……俺はなにも出来ないのか……


 何もかも諦めかけたその時だった。


「感心しないな、大人数で一人を虐めるのは」


 鈴が鳴るような美しい声がその場に響き、声がした方を見るとそこには騎士のような格好に身を包み、腰に剣を携えた美しい女性が立っていた。


 美しく絹のようにサラサラな銀髪に透き通るような碧眼の美人だが彼女の耳は普通の人とは違い尖っていた。


 まるでファンタジー世界からそのまま飛び出してきたような姿の女性はこちらに近づくと鋭い眼光で男達を睨みつける。


「その少年から離れろ」


 その威圧感に男達は一瞬怯むも再び無表情で女性を見つめる。


「失礼ですが、それは無理な提案です。今なら見逃すこともできますのでここは見なかったことにして帰っていただけませんか?」


「はぁ……やはり愚図と話すのは嫌いだな……」


 女性は呆れたようにため息を着くと腰の剣に手を掛ける。


 えっ、もしかして本物の剣? だとしたら——


「ま、待って——」


 俺が止めようとした瞬間女性は剣を鞘を被せた状態で手に取ると目にも止まらぬ速さで黒スーツ男の一人のみぞおちに剣の柄を叩き込む。


「がっ——」


 男は白目を向くとそのまま意識を失い前に倒れた。


「なっ、何が!」


「お、おい! まさか死んだのか?」


「死んではいない、気絶させただけだ。1時間もすれば目覚める。速く連れて帰れ」

 

「き、貴様っ——」


「……まだやるか?」


「くっ……!」


 男達は気絶した男を抱え車に乗り込むと逃げ出すようにその場から離れていった。


 そしてその場に俺と女性が取り残される。


 ……どうすれば良いんだ……この状況……


 あの状況から助けれくれたのはすごく助かったが正直あの男達よりも恐らく本物の剣を所持しているこの女性の方が怖い。


 そんな俺の心境を見抜いたのか女性は剣を腰に戻すと俺に優しく話しかける。


「少年、怪我はないか?」


「は、はい! お陰様で助かりました!」


「そうか、それはよかったよ。ところで少し聞きたいのだが……ここはどこだろうか?」


 ん? もしかして外国人の人か? 


 俺は少し疑問に思いつつもその質問に答える。


「えっと……ここは日本の東京都です。」


 すると彼女は何故か不思議そうに首を傾げた。


「ニホン? トーキョー?」


 まるで聞いたことのない単語を聞いたかのような反応に更に俺の脳は混乱する。


 日本も知らないのになんでこの人は日本にいるんだ……


「なるほど……ではここからエルフの王国へはどれくらいで帰れるか分かるか?」


「エルフ?」


「ああ、私と同じ長い耳を持つ種族だ。見たことくらいあるだろう?」


「ないですね」


 アニメやライトノベルなどでは見たことはあるが当然現実で見たことはない、というか存在していない。


 なので当然エルフの王国など知るわけがない。


「なるほど……ようやく理解したよ……どうやら私は違う世界にきてしまったようだ」


「えっとそれはどういう——」


「来てしまったものは仕方がない……取り敢えずは寝床と食料の確保だな。ところで少年、私に感謝しているか?」


「もちろんです! 危ないところを助けて頂きましたので!」


 俺の言葉を聞いた女性はニヤリと口角をあげる。


 ん? なんだか嫌な予感が……


「では見返りを求めよう、私は家がない。金もない。しばらく君の家で同棲させてもらえないだろうか?」


「え? いや、えっ! そ、それは……」


「もしかして伴侶でもいるのか?」


「……いませんけど」


 彼女すらできたことかない俺に伴侶などいるわけがない。


「なら決まりだ。」


「そんな勝手な……」


 どうやら俺の意思に関係なくもう既にきまってしまったらしい。


「あ、そういえば、まだ名前を聞いていなかったな。名前は?」


「雨宮夕です」


「ユウ……ユウか……覚えたぞ!」


 何度か復唱してしっかりと覚えたのか嬉しそうに報告してくる。


 一見クールそうな人だけど意外と可愛い一面もあるんだな。


「では私も名乗るとしよう、私はエルフの国の騎士団騎士団長シルフィア・ウィクトリアスだ。これからよろしく、ユウ。」


 夜風に美しい銀髪を靡かせながら女騎士のエルフさん……シルフィアさんは俺に手を差し伸べた。




 【あとがき】


 最後までお読みいただきありがとうございます! 


 いよいよ新作スタートです!


 ここからどんどん面白くなって行くので2話も楽しみに待っていてください!


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