第144話

鳥のさえずりと、柔らかな陽だまり。雲ひとつない(だろう)、絵に書いたような、爽やかな朝。


それらに全く似つかわしくない、重だるい自分の身体。



──「(やっちゃった、)」



ベッドの上で、私はしっかりと後悔した。


何せ昨日の記憶がとても曖昧だ。何かを得ようとすると、ズキン、と鈍痛が走る。思い出すのは諦めた方がいい。


恐る恐る視線をスライドさせた。


柔らかであたたかいカフェオレ色の猫っ毛。全体的に色素が薄いのだろう、艶のある肌は毛穴ひとつない。


寝顔だけ見ても甘い顔立ちがよく分かる男は、私の愛用品である、ゴリラ柄の抱き枕をギュッと抱きしめてねむっている。


そして私も男も、当然のように、裸だ。



「やっちゃったよ〜……」



二回目は声に出た。同時に、この男を受け入れたであろう、昨日の私に殺意を抱く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る