第43話
パチパチとめを瞬きする。
2度目のキスに入ろうとする神代くんの口を押さえて顔を背ける。
「やめ、風邪伝染る…っ!」
でも、急に騒いだから頭がフラフラしてきて弱々しく腕が下りてしまう。
「急に騒ぐなよ、こんくらいじゃ伝染んない」
でも、できるだけ神代くんから顔を背けてたら、はぁ…とため息が聞こえてきた。
「はいはい。お嬢様は寝ますかね」
お嬢様……っ?
「おい、無視すんな」
「変な呼び方しないでよ…」
顔を背けて言うと、神代くんの低くて心地いい声で名前を呼ばれる。
「沙桐」
それだけで胸がギュッと苦しくて全身の血がビクビクと震えて熱くなる。
「会いたかったよ」
あたしだって会いたかったよ。
熱で苦しくたって、あの保健室での事が頭に残ってて、夢にも神代くんが出てきたよ。
「風邪伝染っちゃう…早く帰って」
そう冷たくいっても、力強い腕はあたしを離す気配はなくて、立ち止まったままだった足が動き出した。
なぜ知ってるのかわからないけど、あたしの部屋のドアを開けて、ベッドにあたしを下ろす。
「帰んないよ。沙桐、寂しくて泣いちゃうでしょ?風邪治るまで一緒にいてあげる」
優しく頭を撫でて、おでこにキスした神代くん。
やだなあ……………っ
なんで、こういうことするの。
熱が出るといつも心細くて、いつもはお母さんたちがいたのに今回始めてお母さんたちがいないときに熱を出してすごく心細くて寂しかった。
本当は、神代くんが居てくれて嬉しいのに
本当に可愛くないなあ。
次第に涙が出てきて、枕がたくさん濡れてきた。
「神代くん…………
ありがとう」
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