第27話

「沙桐」



徐々に意識が覚醒していく中で、心地いい彼のハスキーな声に耳を寄せる。




靄のかかる目で神代くんを見つめる。



すると、軽く触れるだけのキスをされる。




その唇があたしの色々なところにキスをする。





それだけでもなぜか涙が出てくる。



こんな関係に幸せを感じてる自分。




それでも、もういいと思える。



捨てられるときは、捨てられよう。



でも、それまでは側に居させて…




もうお前に飽きたって言われるだけの心の準備だけはしておくから。




「沙桐また泣いてんの?」




「神代くん……早く…っ」




1ミリの隙間さえ怖くて、縋るように神代くんの首に手を回して引き寄せる。





「……ん」




あたしを強く抱きしめる彼の腕。




何度も何度も触れる唇。




あたしの名前を呼ぶハスキーな声。





「…か、みしろ…っくん」




「…んっ?」





あたしを見つめながら、あたしの頬を撫でる神代くん。





”……好きだよ”




どうしてもあたしの気持ちを言いたくなって、言葉にできないかわりに初めてあたしから唇にキスをした。





見開かれた目を見て、今日は驚いてばっかりの神代くんにちょっとだけ微笑む。




「あー……もう無理」




そう小さく言った神代くんは、動きを速めていった。




部屋に響くのは、あたしたちの嬌声。





そして、我慢しきれなかった嗚咽だけだった。

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