ONE

卑怯な男

第1話

「いゃっ……ぁん、っ」



耳を塞ぎたくなる卑猥な身体同士を打ちつける音。



頭の上でネクタイによって縛られた手では、抵抗するどころか、耳を塞ぐこともできない。



目の前の彼を見ることもできず、ただひたすらこの時間が終わるのを目を固く瞑り、唇を噛み締めて待ち続ける。



固く瞑っているはずなのに目からは、あたしの弱さが嫌になるくらい涙となって零れ落ちる。



その涙を舐めとる彼は、あたしが目を瞑っていることが気にいらないらしく、更に強く腰を打ちつける。




「やぁ………っ!」



「痛いのは嫌だろ?目開けて、俺のこと見ろ」




いくら抵抗したところで、彼は自分の望みが叶うまではやめてはくれない。





早く終わりたい一心で、硬く閉じた目を開ける。




彼と目が合う。




彼の漆黒の瞳は、あたしを抵抗できなくする。

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