ミルクチョコレート〜等身大の愛〜
涼坂 十歌
ミルクチョコレート〜等身大の愛〜
「何? これ」
僕の想い人――神崎雅の、それが第一声だった。
二月十四日。バレンタインデー。僕は意を決して幼馴染にして憧れの人である雅を家に誘った。念の為に言っておくが、やましい気持ちは一切ない。僕が望んでいるのはあくまで高校生らしい健全な交際であり、ではなぜわざわざ彼女を家に呼んだのかと言うと、その理由はキッチンの中央で雅の絶対零度の眼差しを浴びるものにあった。
僕が型から手作りし、昨日丸一日かけて組み立てたチョコレート。雅への十数年ぶんの想いがこもった――やや暴走した気もする――、僕の等身大のチョコレート。本物よりもややハンサムなチョコ像は、親に土下座で頼み込んでキンッキンに冷房を効かせたキッチンで、なんとか溶けずに形を保っている。
「チョ、チョコ」
氷柱のような冷たい目線に射抜かれ、僕はうつむきながら答えた。
「それは見たらわかる」
氷のつぶでのような雅のため息。
……このクールさが、たまらなく好きだ。もしかしたら僕はちょっと変態なのかもしれない。
「み、雅。小さい頃からずっと、雅が好きだ。僕と、付き合ってください!」
棒立ちの雅に向かってがばっと頭を下げ、握手を求めて手を伸ばす。一世一代の覚悟で口にした、全身全霊の告白。
静まり返るキッチン。
あぁ、ついに言ってしまった……。
長い沈黙が流れる。
いっさいの反応を得られぬまま時は流れ、僕の頭に血がのぼり、のぼせたようにくらくらしてきた頃。
「はぁぁぁぁ」
雅が、大きな大きなため息をついた。
ばしん
ぴんと伸ばした僕の手が勢いよく叩き落される。
あぁ、フラれ、
「一週間」
雅の不機嫌そうな声が言った。
顔を上げると、呆れ果てた顔の雅が背後にあるチョコを指さした。
「これに免じて、一週間だけお試しで付き合ってあげる」
ぽかん
きっと今僕は、そんな効果音がよく似合う顔をしている。何を言われたのか、理解するのに時間がかかった。「一週間だけ『付き合ってあげる』」……?
「ほんとに!?」
思わず身を乗り出すと、近い! と頭をはたかれた。
「一週間だけよ。それが終わったら元通り。ただの幼馴染。わかった?」
幼子を諭すような口調で言う。
僕は食い気味で頷いた。
「うん! ありがとう雅!」
「よし、そうと決まればやることはひとつね」
興奮する僕など意にも介さず、雅は平静な顔で腕を組んだ。
「やること?」
雅にも恋人とやりたいことでもあるのだろうか。意外と乗り気だったりするのかな、なんて考えながらやや浮かれて尋ねる僕。
しかし雅はにこりともせず、変わらない絶対零度の目線で背後のチョコレートを見やった。
「あれ、解体するわよ」
溶けたらチョコがもったいないし、保存のための冷房代だって馬鹿にならない。
クールな雅らしいもっともな理由により、もう一人の僕はあっけなく解体され、小さく刻まれてタッパーに詰められた。
残酷?情緒がない?
そんなこと言わないさ。刃物のごときその鋭さも、また雅の魅力の一つ。そこにしびれる憧れる。
「さて、じゃあ今日から一週間付き合うわけだけど、何かやりたいことでもあるの?」
『僕』の前髪をかじりながら、雅が淡々と言った。
もう少し恥じらった姿も見てみたかった、なんて思いは口にはしない。思い切りのいい雅も好きだ。
「うーんそうだな、一緒にお昼を食べるとか、放課後一緒に帰るとか?」
と、僕は『僕』の指を食べる。あ、この爪、一番綺麗にできたやつ。
「そんなことでいいの? わりとよくやってるじゃない。お母さんがいない日におばさんにご馳走になったり、バス停で遭遇して一緒に帰ってきたり」
呆れたように言いながら雅は次のチョコレートに手をのばす。それが『僕』の目だとわかると、グロくて嫌だわ、と器に戻した。
言われてみればそうだ。僕たちの家は斜向かいに位置しており、昔から家族ぐるみの付き合いがある。母さんは雅とその妹を実の娘のようにかわいがっているし、雅の妹は僕をお兄ちゃんと呼ぶ。……もしかして、もう結婚してる?
――いやいやいやいや。
僕は慌てて飛躍した思考を捕まえる。こういうのは、手順が大事。既成事実があったって気持ちがなきゃ意味がない。
とはいえ僕には特に雅とやりたいことがないのもまた事実だ。僕が雅のことが好きで、雅も僕のことが好きで、二人が一緒にいられたら、僕はそれだけで幸せなんだ。
なんて言いつつ、幼馴染間の家族愛的な愛情では満足できないのが複雑な男心なわけで……。
「あ、じゃあさ、デート行こうよ。日曜日、遊園地。どう?」
苦し紛れに提案する。
遊園地には小学生の頃までは二家族合同でよく行っていたが、二人っきりで行ったことはない。
「ふうん、まぁいいけど。それだけでいいの? 一週間もあるのに、最終日にデート行くだけ?」
ジトッとした目で雅が僕をにらむ。
確かに、せっかく一週間も付き合ってくれるのにそれだけなのはもったいない。うーんでも、あと何をしたらいいんだろう……。
僕が頭を抱えていると、雅がそうだ、と手を叩いた。
「私、お弁当作ってあげる。それで昼休み、一緒に食べる。それでどう?」
「いいの!?」
思わず食い気味に返事する。
雅のお弁当! しかも一緒に食べるなんて! これまさに至福!
雅はくすりと笑った。
「いいわよ。ただし、一切の文句は受けつけません」
「もちろんだよ! 雅が作ったものに文句なんてつけるもんか!」
そうして、僕たちの特別な一週間が幕を開けた。
待ちに待った翌日、昼休み。
人気のない校舎裏のベンチに座った僕は、期待に胸を踊らせながら馴染みのない弁当箱を開けた。
「おぉ〜!」
中を見て、思わず歓声をあげる。
のりたまがかかったご飯、ハンバーグ、ポテトサラダ、卵焼き。
なんて彩り豊かでおいしそうなお弁当。
「す、すごいよ雅! ありがとう!」
大興奮で言うと、雅は一回り小さなお弁当を開けながらふふん、と笑う。
「当然でしょ。ありがたく食べなさい」
いただきます、と手を合わせ、ハンバーグをかじる。お弁当なので冷めてはいるが、十二分においしい。さすが雅、料理も上手。
「うん、とってもおいしい!」
僕が言うと、雅はまた満足そうに笑って、自分のハンバーグを一口食べた。
器用で、自信家で、ちょっぴりおちゃめ。そんな雅が、僕は昔から大好きなのだ。
「それでさ、覚えてる? 学校の帰りに、めっちゃ犬に威嚇されたの」
二人でお弁当を食べながら、話題は僕らの昔話へ。
雅が楽しげに語る話には覚えがある。
あれはたしか小学三年生の頃。僕らは下校中に一匹の犬に遭遇した。
「覚えてるよ。リード振り切って脱走してきた犬でしょ?」
「そうそう! 飼い主さんが追いかけてきてくれて助かったけど、ほんとあのときは怖かったよね」
雅はそう言いながら苦笑する。
気の強い雅だが、これで意外と怖がりなのだ。あのときだって吠えられた雅は怯えて動けなくなっちゃって、僕は道端で拾った木の枝を構え、けれど何もできずに涙目だった。雅の助けを求める声に気づいた飼い主がすぐに走ってきたおかげで事なきを得たのだ。
「怖かったでいえばあれもだなぁ。不審者事件」
と、雅が懐かしむように言う。
僕は内心どきりとし、あやうくつまりかけたハンバーグをなんとか飲み込んだ。
「あぁ、あれね……」
僕もよく覚えている。五年生のときに遭遇した不審者。黒の上下にサングラスにマスクという典型的な不審者スタイルで僕らの前に現れ、ビニール袋に詰め込んだ大量のお菓子を餌に僕らを誘拐しようとした男。
もうずいぶん昔のことだが、今でも立派にトラウマだ。逃げても逃げてもついてくる男。なんとか振り切ろうといくつも角を曲がるうちに、通学路から逸れて迷子になった僕ら。いつの間にか学区外まで行っており、幼い僕らは知らない町で途方に暮れた。土地勘のない場所、背後には不審者。そんな絶体絶命の状況のなか、雅は機転を利かせて近くの中学校に駆け込んだ。そこの先生たちが保護してくれて、僕らは助かったのだ。馴染みのない保健室に親が迎えに来てくれたときには、ほっとして二人揃ってわんわん泣いた。
「あのときから防犯ブザー持ち歩くようになったもん、私。今でも持ってるんだよ」
どこか得意げに雅が言う。
うん、ぜひ持っていてほしい。昔からかわいかった雅だが、今ではすっかり綺麗な大人の女性になったのだ。油断した隙にどんな悪い虫が寄ってくるかわかったものじゃない。心配で心配でいつも目で追ってしまう。そう、心配で。
二人でいると、僕は聞き役に回ることが多い。僕は雅の話を聞きながら最後に取っておいたプチトマトを口にした。
口の中で、ひやりとした食感が転がる。
雅は怖がりだけど、優しくて、勇気のある人だ。困ったときには助けを求めることができるし、助けてくれる人だって大勢いる。僕なんかいなくたって生きていける。そんなことわかってる。
だから僕は、うん、そうだな。きっといてもいなくても大して変わらないんだろうけど、雅の人生に、ほんの少しでも彩りを加えられたら嬉しいな。
それから一週間、僕らは毎日一緒に昼ご飯を食べた。さすがに毎日お弁当は申し訳ないので、二人で学食に行ったり、購買のパンを食べたりもした。土曜日はそれぞれ部活があって別行動。
そしていよいよ、待ちに待った日曜日がやってきた。
天気は快晴。気温も快適。これ以上ない遊園地日和だ。
僕は入場ゲートの前で青空を見上げ、一人で笑った。不審人物かな。でも仕方ない。こんなに楽しみなこと、今までになかったんだから。
「ごめん、待った?」
集合時間ぴったり。雅がやってきた。
全然待ってないよ、なんてかっこつけて言おうとしたしたのに(本当は約束の三十分前に来ていた)、僕はそれを口にはできなかった。
雅のあまりのかわいさに、心臓が貫かれた。
普段は活動のしやすさ重視であまり洒落っ気のない雅だが(そんなところも現実的で素敵)、今日は違った。
チェック柄のジャンパースカートに茶色いローファー、いつもポニーテールの髪は下ろされているし、どうやらメイクもしているらしい。
どうしよう、かわいすぎて馬鹿になりそう。
というか、こんなにおしゃれしてきてくれるなんて、もしかして脈アリ……!?
「あんたと二人で出かけるって言ったらお母さんが張り切っちゃって。今日で別れるのにね」
一瞬膨らんだ僕の淡い期待はばっさりと一瞬で切り捨てられた。
でも雅のお母さん、グッジョブ! 最高のコーディネートをありがとう!!
それから僕らは、アトラクションを片っ端から楽しんだ。ジェットコースター、メリーゴーランド、観覧車、ゴーカート。ちなみに雅の恐怖対象に絶叫系アトラクションは含まれない。満面の笑みでスリルを楽しみ歓声を上げる雅の横で、僕だけが無様に絶叫する。これはもう昔からだが、なんとも情けない話だ。
そんなこんなですっかり日が暮れ、そろそろ帰ろうか、という流れになったとき。
「あれ、神崎さん?」
並んで歩く僕らを、後ろから誰かが呼び止めた。
振り返るとそこには、僕の知らない男性が三人。見た感じ歳は近そうだけど、なんだかちょっと柄が悪い。できれば関わりたくないタイプだ。
「瀬尾くん」
雅が硬い声で応えた。
どうやら雅の知り合いらしいが、あまりいい空気ではない。雅の表情がかたい。
「うわー、休みの日ってそんな感じなんだ。かわいいね」
「……ありがとう。ごめん、もう行くね」
早口で言って背を向ける雅。
僕も慌ててついていくが、瀬尾とその仲間は追いかけてきた。あいにく人気の少ない通路で、彼らを咎める人はいない。瀬尾たちは僕らを囲むようにして同じペースで歩きながら、嫌な感じの声で言う。
「そっちの奴って彼氏? そんないもっぽい奴よりオレのほうがよくない? あ、なんかの罰ゲームとか?」
さすがの僕もむっとして眉をひそめた。あまりにも失礼だ。しかし雅がなにも言い返さないので、僕も黙ったまま歩く。
「ねぇ神崎さん、無視しないでよ」
突然雅の体がつんのめり、足が止まった。
瀬尾が雅の手を掴んだのだとわかった瞬間、僕も雅の手を掴んでいた。
「なに?」
「……雅を離してください」
嫌な目でねめつけられ、声が震える。あぁ、仮にも彼氏なのに、情けない。
「え? なに、ほんとに彼氏なの、お前?」
露骨に馬鹿にした声で瀬尾が言う。他の男たちも見下すような目をして僕を取り囲む。
「身の程わきまえなよ。お前なんかが神崎さんにつりあうわけないじゃん」
「お前、瀬尾に勝ってるとこ一個もないぜ?」
「つーか何この服、だっさ!」
男の一人が、僕の肩を強く押した。僕はバランスを崩して後ずさり、雅の手を離してしまう。その隙に、瀬尾が雅を強く引き寄せた。
「神崎さん、まだ時間あるでしょ? オレと遊んでこーよ」
雅の顔が引きつる。いくら雅が強くてかっこいい女の子でも、腕力では男には敵わない。
「雅……!」
僕は反射的に名前を叫び、瀬尾の腕にとびついた。そのままの勢いで、よく鍛えられたその腕に思いきり噛みつく。
「痛っ」
瀬尾の力が緩んだ隙に雅が逃げ出した。
「てめぇ、なにすんだよ!」
仲間の一人が僕の髪を掴んで頭を引っ張る。僕は無視して雅を振り返り、叫んだ。
「逃げて! 雅!」
怯えて動転している様子だったが、幸い雅はすぐに走り出した。偉い。ちゃんと人の多いアトラクションエリアに向かってる。さすが雅。
「ふざけんなよ!」
男の激情のまま、僕は地面に叩きつけられた。歯を食いしばって痛みに耐えながら、瀬尾の足にがっしりとしがみつく。
ふざけんな、なんて、こっちのセリフだ。せっかくのデートを邪魔しやがって。いもっぽいのも釣り合ってないのもセンスが悪いのも、雅の隣に立つのにふさわしくないことも、僕自身が一番わかってるんだ。だけど雅が大好きって気持ちだけは、絶対誰にも負けないから。だから、絶対にこいつを雅のもとへは行かせない。
痛みと悔しさと恐怖と、いろんな感情がぐちゃぐちゃになって、僕の目には涙がにじんだ。
格闘技でも使って、鮮やかに倒せたらよかったのに。能のない僕はみっともなく地面に転がって足で引きずられてるだけ。子どもの頃からなにも変わってない。かっこ悪い。
しびれを切らした瀬尾たちが僕を蹴りつけ始めた頃。
「こっちです!!」
ぱたぱたという複数の足音と雅の声が聞こえた。
声のした方を向くと、雅が警備員を二人連れて走って来ている。
「何してるんだ!?」
「やべぇ!」
「逃げるぞ!」
大柄な男性警備員が怒鳴ると、取り巻き二人は瀬尾を見捨ててあっさりと逃げ出した。
「待てよ!」
身動きの取れない瀬尾が叫ぶ。
警備員の一人がトランシーバーで何事か言いながら二人を追いかける。もう一人の警備員は、瀬尾の前で足を止めた。
「向こうで、少し話を聞かせてもらえるかな」
事務所で傷の手当をしてもらい、僕らは遊園地を出た。幸い大きな怪我はなく、軽い擦り傷と打撲で済んだ。雅がいち早く助けを呼んできてくれたおかげだ。
雅はすっかり気落ちしてしまっていたけれど、駅までの道すがら、瀬尾との話をぽつりぽつりとしてくれた。
瀬尾とは中学の頃から塾が同じで、数週間前に告白されていたらしい。断ったはいいものの、それ以降、今日のようなからかいやつきまといが続いていたとのこと。
雅がそんな目にあっていたなんて全然気がつかなかった。誰より側にいたつもりだったのに、本当に情けない。
「ごめん。変なことに巻き込んじゃって、怪我までさせて。せっかくの、デート、だったのに」
うつむいた雅が力なく言った。
僕は慌てて応える。
「ううん。僕の方こそごめん。雅のこと、守ってあげられなかった」
犬のときも、不審者のときも、今回も。僕は何もしてあげられなかった。
すると雅は、激しく首を振った。
「それは違う。あんたは昔からずっと、私を助けてくれてる。守ってくれてる」
僕は驚いて言い返す。
「で、でもいつも雅が解決してくれてるんだよ。今回だって、雅が人を呼んできてくれたおかげで」
「側にいてくれるだけでいいんだよ!」
突然雅が叫んだ。足を止め、潤んだ目で僕を見上げる。まだ動揺が抜けきらないのか、その手は弱々しく震えていた。
「全部解決なんてしてくれなくていい。等身大のあんたが側にいてくれるのが、私には一番心強いんだよ。一緒に立ち向かってくれるのが、すごく嬉しいんだよ」
だから私は頑張れるんだよ。
消え入りそうな声がそうつぶやく。
「雅……」
僕は今にも泣き出しそうな雅の肩に手を添えた。
「……私のこと、嫌いになった?」
うつむいた雅が小さく言った。
その言葉に僕は耳を疑い、慌てて否定する。
「え!? いやいやいや! 好きだよ、大好き」
しかし雅は何も言わない。ぴくりとも動かない。あれ、何か間違え――。
「私も、あんたのこと好き」
……え??
僕は自分の耳を疑った。今、なんて?
理解が追いつかずリアクションがとれない僕。すると、雅がぱっと僕の手をつかんだ。潤んだ目でまっすぐに僕を見つめ、もう一度言う。
「私も、あんたのこと好き……!」
僕は驚いて目を見開く。
うつむいて言葉を探しながら、雅はゆっくり続ける。
「今までずっと、気づかなかったけど……。あんたが殴られてるの見て、すごい辛かった。一人ぼっちになって、すごく、心細かった」
僕の手を握る彼女の細い指は、まだ少し震えていた。
「幼馴染みとしてじゃない。もっと近くにいてほしいと思った」
初めて告げられた雅の想い。雅が弱い僕を認めてくれたことも、僕と同じように思ってくれたことも、何もかもが嬉しくてしかたがない。強くて優しくてかっこいい、だけど少しだけ怖がりなこの女の子が、とても愛おしい。
「だめ、かな」
雅がそっと僕を見上げる。
「ううん、僕も大好きだよ」
溢れる愛情に突き動かされるように、僕は雅を抱きしめた。
これからも、等身大の僕たちで、手を取り合って進んでいこう。
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