始まりの旋律

第1話


想いが通じて1ヶ月。気付けばもう12月。




あれから私と、リョウ先輩を除く先輩たちは少しだけ距離が遠くなってしまった。




楓先輩と別れてリョウ先輩と付き合ったんだ。同じグループにいてそうなってしまったからきっと仕方がないこと。




それでもニッシーはたまにメールをくれたり気にかけてくれていた。



楓先輩は風香と上手くいっているようで、風香から楓先輩の様子は聞いている。



ユウキ先輩も廊下で会うと、相変わらず爽やかに接してくれてるし、タケ先輩もすれ違うと声はかけてくれていた。




全員で集まることはもう随分ないけど、こうやって一人一人とは相変わらず繋がりはあった。




リョウ先輩はというと....あの日以来会っていない。



というのも、あれからリョウ先輩は部活動を再開した。リハビリの調子が良いようで、肘の骨もほぼ元通りになったみたいだ。肩の方はなかなか思い通りにはいかないらしく、まだ腕も上がらないらしい。


別メニューにはなるものの、練習にも参加するようになった。





でもやっぱり寂しい。せっかく恋人になれたのに現状は前よりも会えなくなってしまっている。




連絡は毎日取っていた。メールや、電話。リョウ先輩は部活が終わると毎日メールを送ってきてくれ、寝る前に電話をくれる。



そのことだけが私の唯一の楽しみになっていた。




[もしもし]




[お疲れ様、リョウ先輩]




[お疲れ。今日も疲れた....]




[フフッ、声が疲れてるもんね]




[あぁ、だいぶ身体がなまってるからな。休みすぎた。もう寝る時間?]




[ううん、今日はまだ起きてるよ。明日は休みだから]




今日は12月1週目の金曜日。リョウ先輩の電話を待ちながら机に向かって英単語を覚えていた。




[そうか。舞、明日のお昼からって空いてる?]




えっ、お誘い?!




[うん、暇してるよっ]




[フッ、即答。そんなに俺に会いたいか]




[あ、いや.....うん。だってもうずっと会ってない....]




寂しいもん....




[....そーだな。明日さ、昼から体育館使えないらしくて部活午前中で終わるんだ。昼から出れる?]




[うん!大丈夫!]




[.....張り切ってくれてるとこ悪いけど...うるさいのが一人着いてくる。というか、せっかくのオフなのに着いて来てって頼まれた。]




[え??]

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る