第10話 リヒトの力

なんとかヴィヴィアンとの風呂を乗り切り、一階に向かうと、レヴィンが待っていた。


「いや、さっきは悪かった。」

「いえ…こちらこそ事情も知らずスミマセン。」


一応こちらに非があるので謝っておくことにする。するとレヴィンはふふ、と笑った。


「そんなに畏まらなくていい。俺は王子だが…まあ問題児だし。」


その時、後ろから大声がした。


「レヴィン!お前は我々落ちこぼれクラブのエースなのに、幼女に手を出すとは何事だぁ!」

「出してないって!」


驚いて振り返ると、黒髪ボブの…幼女がいた。


ヴィヴィアンに助けを求める目を向けると、ヴィヴィアンが幼女を呼び寄せてくれた。


「リヒト、この人はビビ子さん。このレストランの店員さんで、一応…23歳。」


幼女じゃなかったのか。

ヴィヴィアンは年齢のところを小声で言ったが、ビビ子は「勝手に年齢をいうな!」とぷりぷりしている。


「お兄ちゃんと私は…まぁすこし問題があって、家からあまりよく思われてなかったから、落ちこぼれクラブって呼ばれてるの。そしてその団長が…」

「私だ!」


そんな自信満々で大丈夫なのか。


「私は占い師だったのだが…今は23でアルバイト生活!1番の落ちこぼれである!」

「…そうなんですか。」


なんと反応していいか分からないためとりあえず頭を撫でておいた。23歳だがリヒトと同じくらいの身長しかない。


「なんだ?撫でても何も出ないぞ?」

嬉しそうでよかった。


「そうだ、もと占い師のビビ子さんならリヒトのスキルについて何かわかるかも!」

「スキル??」


俺は自分のスキルについて説明した。

ビビ子さんはううん、と唸る。


「「モブ」「主人公」……聞いたことのないスキルじゃのう…。」

「何かこれで入れるギルドはないの?」

「うーん、スキルだけでは難しいかもだな。なんせ前例がない。炎魔法とか治癒とかわかりやすいスキルならそれだけで入れるギルドもあるだろうが…」


ヴィヴィアンが残念そうな顔をした。


「え?リヒトは戦闘系のスキルを持ってないのか?」


黙っていたレヴィンが驚いたように口を開いた。

…煽りか?レヴィンを見ると、レヴィンは慌てたように首を振った。


「いや、そういう訳じゃない!だって勇者相手に戦えていたじゃないか。スキルを持っていないなら、あれが素の力ってことになるぞ…」

「あれは、向こうがめちゃくちゃ油断してたから…それに、戦闘ってよりかただのサバイバル、敵を倒すんじゃなくて生き残る手段だと思う」


まあ、サバイバル能力は前世の経験からだからあるかもしれないが、敵を倒せないなら意味ないだろう。


「それにあの時…リヒトに近づくと俺の筋力がすこし上がったような気がする!」

「…気のせいだろ!」


…もしかしてこれがスキル「モブ」か?「主人公」を強化するとか言ってたし…

でもこいつが主人公に見えたとか言ったら調子乗りそうだもんな。黙っておこう。


「そうだ!」


ビビ子が突然立ち上がった。


「スキルがなくても能力があれば、テスト依頼でギルドに入れるはずではないか!」

「確かにそうじゃん!」


ヴィヴィアンも声を上げ、俺の腕を取って外に飛び出す。俺は慌てて走り出した。


「話が見えないんだけど!」

「後で説明するよ!じゃあ、ギルド連合に、レッツゴー!」

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