第16話 襲撃①

「…kろ…起きろ!…おい、起きろ!」


 俺はリオの声で目が覚めた。


「ん……なんだよ……」


 まだ意識が霞んでいる。体を起こすと、リオの金色の瞳が真剣な光を帯びていた。


「侵入者だ」


 一瞬で眠気が吹き飛ぶ。


「侵入者……?!」


 セリスが静かに歩み寄り、俺に膝を折る。


「マイマスター、準備を」


 彼女の紫の瞳も、夜のように冷たく光っていた。


 俺は慌てて右手をかざし、ステータス盤を呼び出す。

 マナの残量は――1,800。昨日の強化の消耗がまだ響いている。


「……タイミング悪すぎだろ」


 ぼやきながらも、胸の奥にじわりと熱が広がる。

 初めての侵入者。初めての実戦。

 ここで俺がどう動くかが、このダンジョンの未来を決める。


「リオ、どんな奴らだ?」


 声を潜めて尋ねると、リオは耳をぴんと立てて答えた。


「四人組だ。装備は軽いが、動きは素人じゃない」


「冒険者ってことか……」


 心臓が高鳴る。いきなり本番が来てしまった。

 セリスが俺を見つめ、静かに言う。


「マイマスターの初舞台……。私たちが必ず支えます!必ずや勝利を!」


 彼女の声音には微塵の迷いもなかった。


「……わかった」


 俺は深く息を吸い込み、ステータス盤を閉じた。

 ダンジョンマスターとしての、俺の最初の戦いだ。


 リオが鋭く息を吐いた。


「奴ら、もう第一層に踏み込んだぞ」


「スライムたちは配置済みだ。迎撃に向かわせるか?」


 俺は頷き、右手をかざす。視界の片隅に並ぶスライムの群れが、静かに待機しているのが見えた。


「行け」


 小さな合図と同時に、スライムの群れがぬるりと前進する。

 暗い洞窟の奥で、わずかな水音が反響した。


「――敵と接触まで、あと少し」


 セリスの声が低く響く。紫の瞳が冷たく光る。


 俺の胸は激しく脈打っていた。

 初めての侵入者。初めての戦闘。

 失敗すれば、すべてが終わり。


 だが同時に、不思議な高揚感があった。

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