目標 side;帝
第6話
あぁ、またか。
そう舌打ちした後に感じんのは、苦々しさと静かな狂喜。
吹けば飛びそうに儚げな女はいつも、俺の望み通りになんねぇ。
毎度毎度、あと少しっつぅとこで逃げていく。
堕ちたと思ったその瞬間に、その瞳にぞくぞくとする意志を宿す。
大概の人間が眼を逸らす俺の視線を、真っ向から受け入れ挑む。
この真っ直ぐで、強情で、頑迷なほどの芯の強さに苛立ちと不満もあるが、堪らなく惹かれんのもまた事実。
思い通りにいかねえこの瞳に、俺が映ることに満足を憶える。
媚でも 怯えでも 憎しみでもねぇ。
ただ “俺” だけを映すこの眼に、手に入れてぇって欲望が募る。
期待すればするほど、手に出来かけて逃げられた時の失望は大きく、欲望は増すばかり。
大体俺は、あの成り損ないを庇うこいつが面白くなかっただけだ。
唯一俺の興味を惹いて已まない俺の女が、その身を犠牲にして気に掛ける理由が、たかが “血の繋がり” 。
んな軽薄で、あってないようなものの為に、璃依が傷付いて、心を揺らすアノ存在が、いい加減目障りで仕方ねぇ。
この世界に息をして、動いてるっつぅそれだけで、こいつが感情を向ける。
・・・本気(マジ)で消そう。
痛めつけても、殺しても意味はねえ。
根本から、璃依が憂える大本から消さねぇと、こいつは俺の元まで堕ちてこねえ。
辛いからと、苦しいからと、逃げて、諦めて、全部捨てる女じゃねえ。
逃げても、諦めても、全部放り投げて、自分一人楽になるような、弱ぇ女じゃねえから――。
「本気で可愛くねぇな」
絡んできた手を握り返し、頑固な口に仕置きする。
「頼まれても放してやんねぇ」
だから、安心して手離せ――お前が守ったきたもん、全部。
捨てられねえなら、捨てさせるまで。
アレは要らねぇ。アイツらに璃依は勿体ねえ。
“秋月璃依” を必要としない人間が、こいつの庇護を当然のようにのうのうと享受する?
俺だけを選ばない理由が、あんな寄生虫もどきだ?
考えただけで苛つく事実に、俺は深く息を吸った。
癖んなる、甘く優しい璃依の匂いに思考が落ち着きを取り戻す。
今はまだいい。だが、何年掛かろうが、全部捨ててもいいっつえるほど、ただ俺だけに溺れさせる。
その為の、大掃除に取り掛かる。
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