第1章 薄氷の喜劇
躊躇
第2話
朧気に覚えているのは、幼稚園に入る前。
『どっちでしょ?』
私と瑠璃のお気に入りは、“当てっこ遊び”だった。
あれはまだ、私たちが見た目も、中身もそう変わらない、“双子”だった頃。
着る服も、好き嫌いも、寝るのも遊ぶのも一緒だった。
『ママ、えほんよんでぇ』
『よんでぇ』
2人っきりの姉妹。同じ布団で、母に絵本を読んでもらうのが、寝る前の習慣。
『むかし、m・・・?』
『むかしむかし、あるところに。っていうんだよ』
『まぁ、ルリちゃんはすごいわねぇ。もう字が読めるの?』
『ブッブー。はずれぇ。りぃでした』
『ママはずれぇ。ルリはルリよぉ』
『あら、ママまた間違えちゃった』
キャラキャラと笑う私たちに挟まれて、優しく笑う母は、私の頭を撫ぜて言った。
『でも、リイちゃんホントにすごいわよ。もう字が読めるなんて、流石お姉ちゃんね』
それが、私が本を好きになったきっかけ。
何もかも同じだった私たちが変わりだしたのは、幼稚園へ行きだしてから。
世界が広がるとともに、段々と私たちに“個性”が生まれだした。
絵本が好きな私、ママゴトの好きな瑠璃。
自然、好きなものや性格に差がでてきた。
そしてその頃から、母さんは変わっていった・・・。
それを逸早く感じ取ったのは、多分私。
『お姉ちゃんなんだから、我慢しなさい』
何時からか、これが母さんの口癖になった。
そして、その頃から瑠璃の我侭が始まった。
『ルリ、これきらい。リイのがいい』
『リイ。貴女お姉ちゃんなんだから、ルリに譲って上げなさい』
『ルリ、これヤダ』
『わたしも』
『リイ。お姉ちゃんなんだから、我侭言わないの』
少しずつ、少しずつ、私たちの間には壁ができていった。
それを決定付けたのは、本当に他愛もない、小さな子供の嘘。
確か、幼稚園でおやつを多く食べたのは、どちらかと言うものだったはず。
私たち双子のどちらかが食べていたと言う証言に、先生が私たちを呼んだ。
『違うよ、ルリじゃない。ルリ、ご本読んでたもん』
『違う。本読んでたのは私でしょ。ルリ、嘘つかないで』
『嘘じゃないよ。ルリ、ご本読んでたもん』
結局、私たちは2人で怒られた・・・先生には。
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