第15話 脅迫の使者
村の建設は順調に進んでいた。新しい集会所の基礎が出来上がり、村人たちの顔には希望の色が広がりつつあった。しかし、その中で蒼真は一族内の不穏な動きを常に気にかけていた。彼が村との協力を続けていることを快く思わない一部の勢力が、何か新たな行動を起こす兆しがあった。
ある日、蒼真の屋敷に再び使者が訪れた。前回と同じような豪華な装いをした使者たちだったが、その雰囲気は前回よりも険しく、何か緊張感が漂っていた。使者の代表である男は、冷ややかな目つきで蒼真に向き直った。
「若当主様、再びお会いできて光栄です。一族内では、あなたの治め方に関して再評価が必要であるという声が上がっています。今回は、そのことについて話を伺いたいと思います」
その言葉に、蒼真は眉をひそめ、静かに答えた。
「私はこの村を守り、村人たちと協力して繁栄させることが一族のためでもあると信じています。それに何か問題があるのですか?」
使者は鋭い目で蒼真を見つめ、冷ややかに微笑んだ。
「一族の中には、あなたが村人たちに甘く、力を示していないと考える者もいます。一族の権威を示すためには、もっと厳格な対応が必要だと。ですから、若当主様にはこの村の統治について、改めて一族の方針に従うよう求めます」
その言葉に、茜は蒼真のそばに立ち、緊張しながらも毅然とした態度で使者に向き直った。
「蒼真くんは村のために正しいことをしているんです。この村の人たちを守り、共に繁栄することが一族にとっても大切なことだと思います」
使者は茜の言葉に視線を向け、少しだけ眉を動かした。
「そちらの方は……茜様でしたね。確か、若当主様のお側で支えていらっしゃるとか。しかし、一族の方針に従わないことがどれほどの影響を及ぼすか、分かっているのでしょうか?」
茜は一瞬だけ戸惑ったが、すぐに強い意志を取り戻し、使者をまっすぐに見つめた。
「私は分かっています。でも、蒼真くんのやっていることは間違っていない。この村を守り、人々と共に歩むことが正しいと信じています。それを諦めることは決してありません」
蒼真は茜の言葉に心を動かされ、彼女の手を握りながら使者に向き直った。
「茜の言う通りです。この村は一族の重要な拠点であり、ここを守り、共に成長していくことが一族全体の利益にも繋がります。私はその信念に基づき、統治を続けていきます」
使者はその言葉を聞いてしばらく沈黙していたが、やがて冷たい笑みを浮かべた。
「そうですか。若当主様がそうおっしゃるなら、上層部にはその意志を伝えましょう。しかし、一族の決断は厳しくなることを覚悟しておいていただきたい。あなたの覚悟がどれほどのものか、試されることになるでしょう」
そう言い残し、使者たちは屋敷を去っていった。茜はその後ろ姿を見送りながら、胸の中に不安と怒りが入り混じった感情を抱いていた。
「蒼真くん、大丈夫?あんな風に脅されて……」
蒼真は深く息をつき、茜に向き直り、その目に決意を込めた。
「大丈夫だ、茜。あの者たちは私に圧力をかけて、自分たちの思い通りにしたいだけだ。だが、私はこの村と皆を守ることを優先する。どんな圧力にも屈しはしない」
茜は蒼真の強い意志に心を打たれ、彼の手をさらに強く握った。
「蒼真くん、私も一緒に戦うわ。あなたがどんな困難に直面しても、私はあなたのそばにいて、あなたを支える。だから、一緒に頑張りましょう」
蒼真は茜の言葉に心から感謝し、彼女を抱き寄せた。
「ありがとう、茜。お前がいることで、私はどんな試練にも立ち向かうことができる。これからも共に進もう」
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その夜、蒼真と茜は村の防衛体制を再確認し、護衛たちと共に今後の対策を話し合った。一族内で蒼真に対する反対勢力が増えつつあることを感じ、彼はさらに防衛を強化することを決めた。
「この村が狙われる可能性が高まっている以上、私たちは防衛を強化し、皆が安全に過ごせるようにする必要がある。特に夜間の巡回を増やし、不審な動きがあればすぐに報告してくれ」
護衛たちは蒼真の言葉に深く頷き、すぐに準備に取り掛かった。茜もその様子を見守りながら、彼の決意に寄り添うことを心に誓った。
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翌朝、茜は村人たちと集まり、今後のことについて話をしていた。蒼真の計画に対して村人たちは変わらぬ支持を示し、彼の決断を支えることを約束していた。
「若当主様がこんなにも村のことを考えてくださっている以上、私たちも精一杯協力します。茜ちゃんも頑張ってるし、私たちも負けていられないわ」
村の女性がそう言って笑顔を見せた。茜はその言葉に感動し、心の中で蒼真への感謝と誇りを感じていた。
(蒼真くん、村の人たちはあなたを信じている。だから私たちは、どんな困難があってもこの村を守り抜くわ)
その日の午後、茜は蒼真のいる書斎を訪れ、彼に報告をした。
「村の人たちは皆、あなたを信じて協力してくれると言っているわ。だから、どんなことがあっても負けないわね」
蒼真はその言葉に微笑み、茜の手を取った。
「ありがとう、茜。お前が村の皆にこうして支えられていることが、私にとってどれほど力になるか。これからも共に戦っていこう」
茜は深く頷き、蒼真の胸に寄り添った。
「もちろんよ、蒼真くん。あなたがどんな時でも笑っていられるように、私が支えるわ」
二人はお互いの存在を確かめ合いながら、新たな試練に立ち向かう決意を固めた。村と一族、そして彼らの未来を守るため、二人の絆は一層強くなり、その愛が新たな希望の光となるように輝き続けていた。
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